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【終幕・NZクジラ座礁】残ったクジラが“爆発”する!? 専門家による後処理へ

ニュージーランドで史上最悪レベルの事故となった2017年2月のクジラの集団座礁。

3日目に入って浜に残っていたすべてのクジラは海に帰され、浜にはつかの間の平穏が訪れている。

しかし、残った300頭ほどのクジラの死骸の後処理も簡単ではないらしい。というのも、浜で死んだクジラはそのままにしておくと爆発してしまうというのだ。

クジラ爆発を防ぐための最後の処理の模様をレポートして、このクジラ座礁事故の一連の記事を締めくくりたいと思う。

合計700頭近くに上ったクジラ集団座礁

ニュージーランドの南島、ネルソンに近いフェアウェル岬で起きた、クジラの集団座礁事故。
1日目に416頭の座礁(312頭が死亡)、2日目にさらに200頭ほどの座礁が起き、ニュースによれば今回の座礁総数は700頭にも上ったという。これはニュージーランド本島で起きたクジラ座礁事故としては、史上最悪の数字となってしまった。

リンク:1日目&2日目の事故のレポート

ニュージーランドで過去最大規模、400頭ものクジラが座礁。一体何が起きたのか?

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【続報・NZクジラ座礁】原因はサメ? “人間の鎖”でクジラを守れ!

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ニュージーランド中から集まった500名以上のボランティアの手によってその多くは海に帰され、また人間の鎖を作ってクジラを海へ返す模様は世界中に放送されて話題を呼んだ。
3日目に入ってほとんどのクジラは自力で海に戻り、座礁した残りのクジラたちもボランティアの手によって安全な深さにまで運ばれた。まだ湾に近い海にクジラの群れがあるようだが、環境省のボートが群れの様子を逐一観察しているので、さらなる悲劇は防げるだろう。一旦は騒動も収まり、ボランティアたちも帰路につきつつある。

ところが、浜に残った―つまり死んでしまった―クジラの処理も、また大仕事になりそうなのだ。

座礁したクジラは爆発する

ニュージーランド・座礁したクジラ by RNZ

 

冗談のようだけど、事実として座礁したクジラはそのままにしておくと爆発してしまう。
これは胃や内臓の中のバクテリア活動が活発化してガスがたまり、膨張した空気が破裂することで起きるのだという。

環境省のアンドリュー・ラマソン氏はこう続ける。

「このままでは危険なので、これから専門家による“穴あけ”作業を行います。クジラの死骸に予め空気の逃げ道を作って、爆発を防ぐためです。」

300頭ものクジラの死骸については、2mほどの特殊な槍のような器具を使ってすべてに風穴を開け、腐敗が進んで危険がなくなるまで、フェンス等で囲って環境省の管理下におかれるという。ひと段落したとはいえ、まだまだ事故の余韻は続きそうだ。

結局、今回のクジラ座礁事故は何だったのか?

原因についてはまだはっきりとしたことは分かっていないが、やはりフェアウェル岬が構造的に座礁を引き起こしやすい地形であることが主な原因のようだ。2日目にニュースに上った「サメ襲撃説」は、3日目の今日は不思議なほどメディアに上がってきていない。

クジラはよく知られるように超音波を使って地形やエサとなる魚を把握して行動している。超がつくほどの遠浅の湾内に入り込んでしまったことで、その超音波探知(エコロケーション)が機能しなくなってしまったようだ。

ニュージーランドにはこのフェアウェル岬のような「クジラのワナ」と呼ばれるホットスポットが複数あり、はるか昔から小規模な座礁は繰り返し起きてきた。今回は不運が重なって大規模な群れが立て続けに罠にハマり、数百年に一度あるかないかの集団座礁となってしまったのだろう。

クジラ座礁について、ごく個人的な感想

最後に、ちょっと個人的な想いごとを書いておきたい。
僕はニュージーランドでのクジラ座礁と聞いたとき、ある2つのことが真っ先に頭に浮かんでいた。

クジラ島の少女 Whale Rider 2002 by WittyRuby

 

一つ目は、映画のこと。

「クジラの島の少女(原題:Whale Rider)」
という2002年のニュージーランド映画で、現代に生きるマオリ族を描いた作品がある。物語の終盤にクジラの集団座礁がおこり、それを発端にマオリの部族は大きな危機に直面し、物語が大きく動きだす・・座礁のシーンは象徴的だったのでよく覚えている。そのシーンが、ニュース画面のリアルな映像と瓜二つだったのだ。
今回のクジラ座礁はまさに現代版の「クジラの島の少女」。
地元の伝統あるマオリ族は今回の座礁事故をどう受け止めたのだろう?
先住民族マオリ族から見たクジラ座礁。そんなテーマのニュースや出版物はないのだろうか。

 

二つ目は、写真家の故・星野道夫氏の言葉。

星野氏の著書のどこかに、アラスカでのクジラ座礁事故の模様があった。
小さな浜辺にクジラが集団座礁し、それを聞きつけた人々がアメリカ本土からもやってきて救助活動にあたる・・たしかそんな話なのだけど、印象的だったのは救助を見守る先住民族の長老の話だ。長は、星野氏にこう話したという。

「昔は座礁したクジラは我々にとって恵みだった。大地と海が与えてくれた生きるための大切な食糧だった。」

もちろんクジラ漁だけで生きてきた時代とは現代は全く違うけれど、座礁したクジラを前に思うことは先住民族と西欧諸国の考えを持つ人々とではまるで異なっているように思えてならない。そしてその違いは、きっと大地や海との繋がり方そのものの差なのだろう。

もちろん今回の座礁で命を助けようと奮闘してくれたボランティアの方々には敬意を表するけれど、また一方で自然との付き合い方はこれでいいのかな、という不安もある。ここまで読んでくれた読者様がいたら一緒に少し考えてもらえると、このHP『nature new zealand』を書いている者としてはありがたいと思う。

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園芸/造園/個人ガイド/コラム外山みのる
ニュージーランド(オークランド)在住。20歳でNZワーホリ後、海外自転車旅や山小屋バイト等を経て再びNZへ。移住を目指して家族で奮闘中。お仕事は園芸や造園、個人ガイド、コラム執筆。

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