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キーウィを救う新たな光!?遺伝子操作でネズミを根絶する計画がもちあがる!

キーウィを救う新たな光!?遺伝子操作でネズミを根絶する計画がもちあがる!

国鳥にも指定されるキーウィをはじめ、ニュージーランドには世界的にも稀な飛べない鳥たちがたくさん生息している。しかし、そんな鳥の楽園だったニュージーランドにも、19世紀ごろにネズミやオポッサムなどの外来哺乳類が持ち込まれてしまった。外来種に追われた鳥たちは行き場を失い、今ではその多くが絶滅に瀕している。

これらの背景を受けてニュージーランド政府は「2050年までに外来種を根絶します」と宣言。そして、最近になって外来種駆除の新たな手法が持ち上がってきた。

それは、まったく新しいアプローチ、すなわち「遺伝子操作」だ。

いったいどういう計画なのか。そして実行までに立ちはだかる問題は何なのかを追ってみよう。

オスしか生まれないネズミ?「遺伝子操作」アプローチの可能性

PhotonQ-Bubbles of Micro Diversity

哺乳類の遺伝子編集を研究しているオーストラリアとアメリカ・テキサス州の共同研究チームはこのほど、キーウィなどの固有種の生き物を襲うネズミに遺伝子編集を施し、子孫にオスしか生まれないように操作をする計画を提唱した。この研究グループは、すでに遺伝子操作をしたネズミを生み出す研究に着手しているという。

「ドーターレス・マウス(Daughter-less Mouse)」と呼ばれる「メスのないネズミ」が数世代続けば、自然と繁殖相手が見つからなくなる。ネズミは数が次第に減っていき、やがて絶滅してしまう―――共同研究チームは、罠や毒エサに代わる”安くて早い”この新たな手法を次世代の外来種駆除に役立てたい考えだ。

「2050年までに外来種を根絶する」としたニュージーランドにはまたとない一手。しかし、実現にはまだまだ多くの障害が残されている。それは、「倫理的な問題」と「技術的な問題」だ。

成功例は蚊と酵母菌。遺伝子操作はまだ始まったばかり

Rat

第一の問題は、「遺伝子編集テクノロジー」(Gene Drive technology)はまだまだ始まったばかりだという点だ。

世界を見渡してみても、遺伝子操作が成功した例はまだ蚊とフルーツフライ、それに酵母菌のみ。最近になって共同研究チームがネズミの遺伝子をようやく編集し始めたばかりで、この試みはまったく初期段階にあるといってもいい。

遺伝子操作をしても数世代を経ると再びオス・メスともに生まれてしまう可能性も残っており、そもそも自然界に遺伝子操作したネズミを放してちゃんと”普通のねずみたち”に受け入れられるのかも未知数だといえる。

技術を確立させ、且つ沖合の島などで実験を重ねて、初めてNZ本土で実行することができる。まだまだ気の長い時間が必要だろう。

人間にも応用されかねない?国民の合意を得られるか

Possum

NZの害獣の一種、オポッサム

もう一点はいわずもがな、倫理面での問題が立ちふさがる。
遺伝子操作をして、ある生き物の子孫を絶ってしまうーーこのSFのような計画に国民的合意を得るのは簡単ではないだろう。菌、蚊、小型の哺乳類ときて、遺伝子操作の技術がやがて人間にも使われるかもしれないという懸念は消えない。

もしNZのネズミに遺伝子操作を仕掛けるとなれば、その前に遺伝子操作の利用に関して、国際的な枠組みを設けることが必要になってくるはずだ。人々にまったく予備知識のないところから世論をまとめて合意を得るまで、やはりながい時間がかかりそうだ。

生物保護の先進国ニュージーランドへ

「遺伝子操作で外来種を根絶する」アプローチはまだまだ始まったばかりで、長い目で見ていく必要がある。

でも、僕は「おそらくニュージーランドはこの案(遺伝子操作)を採用するだろう」と思う。実はここ10年ほど、2000年代に入ってから、NZ国内ではずっと「1080(テン・エイティー)」と呼ばれる外来種を殺すための毒エサの散布に関して激しい議論がやりとりされてきた。やってみないと分からないような懸念事項もたくさんあったにせよ、最終的には実行に移され、2017年現在ではテン・エイティーは「効果抜群の手法」として理解を得るようになっている。

ニュージーランドは新しい取り組みも積極的に受け入れる準備があるし、テン・エイティーでその実績もできた。きっと、十分な議論がされれば国民は遺伝子操作にもGoを出すだろう。それがたとえ世界で初めての試みだとしてもーー。

ニュージーランドの「2050年までに外来種ゼロ」の取り組みは始まったばかり。新たなニュースが入ってきたら、この「Nature ニュージーランド」でまた記事にしていきたいと思う。

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ABOUT THE AUTHOR

園芸/造園/個人ガイド/コラム外山みのる
ニュージーランド(オークランド)在住。20歳でNZワーホリ後、海外自転車旅や山小屋バイト等を経て再びNZへ。移住を目指して家族で奮闘中。お仕事は園芸や造園、個人ガイド、コラム執筆。

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