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決死のディスプレー”擬傷”に感動・・ニュージーランド・チドリは子育てシーズン!

決死のディスプレー”擬傷”に感動・・ニュージーランド・チドリは子育てシーズン!

もうずいぶん前になるけれど、僕はニュージーランドで鳥の「擬傷(ぎしょう)」という行動を観たことがある。

「擬傷」というのはその言葉通り、鳥が傷をついたふりをするディスプレーのことで、チドリという種類の鳥たちが時折行う行動として知られている。つまり、巣に何者かが近づくと、親鳥は羽を折り下げ、いかにもケガに苦しんでいるように見せかけて侵入者の注意を引き、少しずつ巣から遠ざけてしまおうとする。

擬傷という、卵を守りたいがための、親鳥の決死のディスプレー。

うっかり知らずにニュージーランド・チドリの巣に近づいてしまった僕は、偶然その行動を目にして以来、そのけなげな姿に感動してすっかりチドリのファンになってしまったのだった。

・・と前置きが長くなったけれど、先日そのニュージーランド・チドリの巣をひさしぶりに見に行く機会があったので、かわいい親鳥と卵の写真も交えて、僕の大好きな、けなげなニュージーランドの鳥・チドリを紹介してみたい。




ニュージーランド固有のチドリを探しに!

友人から「チドリの巣と卵が見つかったよ!」と連絡があったのは、ニュージーランドの春真っ盛りの9月ごろだった。
Waiwera(ワイウェラ)という、オークランドから北に30分ほど車で走った先にあるビーチで、ニュージーランド・チドリ(New Zealand Dotterel)の巣がいくつか確認されたんだという。

冒頭で書いた想い出が一気に蘇った僕は、チドリの卵を久しぶりにみたいと(そしてあわよくば擬傷ディスプレーも・・!)、休日を使ってワイウェラに向かった。

ニュージーランドチドリの、柵で囲われた巣と卵。

友人と合流して、ビーチを歩くこと10分くらい。ビーチの先の方に、いくつか巣があるのが見えてきた。

ニュージーランド・チドリの巣は、
「ホントにこれが巣なの???」
というくらい簡素なもので、ビーチにできたちょっとした窪みにそのまま卵が産み付けてある。

そんな巣がどうして遠くから見えたかというと・・

ニュージーランド・チドリの巣。NZ環境省によって柵がしてある。

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こんな感じで、巣の周りに柵がしてあったからだ^^;。
あまりに巣が簡素でビーチと見分けがつかないため、絶滅危惧種のニュージーランド・チドリの巣の多くにはこうして柵がしてあり、「ここに巣があるから気を付けてね!」と注意喚起を呼びかけている。

ニュージーランド・チドリの卵。これまた砂の色と瓜二つで見つけるのはかなり困難。
ニュージーランド・チドリの卵。これまた砂の色と瓜二つで見つけるのはかなり困難・・
ニュージーランド・チドリの卵。上の卵、ちょっとヒビが見える・・!?

こうして至近距離から卵の写真が撮れるとは期待していなかったけれど、ちょうど訪れたのが日中の割と暖かい時間帯だったからか、親鳥は周辺を歩きまわって水を飲んだり餌をついばんだりしていて、「も・・もうちょっと卵に寄り添ったら!?」と突っ込みたくなるくらい、巣から離れている時間が多かった。それでも時折巣のそばまでやってきて、僕たち人間を警戒するようなしぐさは見せてくれた。ピピピピと警戒音を発しながら、僕らが巣から十分に離れるまで真向から向かってくるのだ。

残念ながら擬傷ディスプレーとは再会できなかったけれど・・。風の吹きすさぶビーチで力強く生きる彼らを見て、元気をもらえたような気がした。ビーチにいた3組のつがいから、無事にヒナが育つのを祈るばかりだ。

ニュージーランド・チドリ New zealand Dotterel
ニュージーランド・チドリ New Zealand Dotterel
ニュージーランド・チドリ New Zealand Dotterel

ビーチは誰のもの? チドリとシェアして使おう。

ニュージーランド・チドリは、NZ固有種にして生息数わずか2,500羽ほどしかいない、絶滅が心配される鳥だ。
鳥の保全を第一に考えるお国柄のニュージーランドでは、彼らがビーチにか弱い巣をこしらえると、第一発見者はDOC(環境省)の窓口に電話連絡を入れ、すぐさま柵をして保護する仕組みができている。

今回僕が行ったワイウェラのビーチは巣の周り直径1mくらいの柵だったけれど、同じくオークランド周辺のビーチでも有名な「ピハビーチ」では、巣の周囲どころかビーチ一角を完全に柵で囲って、10mくらいの範囲を”鳥専用”にして守ってあげていたのを見たことがある。

「一羽の鳥のために、NZはここまでやるのか!」と、その柵を見て(そしてその柵の趣旨を理解する住民たちに)感動を覚えたものだ。

ビーチは当然ながら人間だけのものじゃない。鳥が営巣するなら、仲良くビーチを分け合って、見守っていこう。そういう雰囲気が感じられるビーチは気持ちがいい。
もしニュージーランド(特に北島)のビーチで柵がしてある箇所があったら、チドリが子育て中なんだな」と暖かい目で見守ってあげよう。

参考URL:
・New Zealand Bird Online – NZ Dotterel 

Last Updated on 2022年9月25日 by 外山みのる

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