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ニュージーランドに一番最初に放たれた羊は「アレ」を食べて中毒死。一体何を食べた?

ニュージーランドに一番最初に放たれた羊は「アレ」を食べて中毒死。一体何を食べた?

「羊の国」、というイメージのあるニュージーランド。
一時期よりも数が減ったと言えど、NZの人口500万人弱に対して、羊の数はいまなお2500万頭以上。21世紀に入ってもなお、人口よりも羊が多いお国柄だ。

では、こんなことを考えたことはないだろうか?
「ニュージーランドで最初に羊を放したのは誰で、いつのことなんだろう?」・・と。
この問いの答えを調べてみると、なんと「NZ最初の羊」は1773年にまでさかのぼっていく(!)。

ある人物が放った記念すべきNZ最初の羊、「EWE」と「RAM」。
そして彼らを襲った意外すぎる結末。

今日はちょっとそんな話を掘り下げてみよう。

時は1773年。ジェームズ・クックがNZに上陸。

ジェームズ・クック像
ジェームズ・クック像 by Flicker

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実はニュージーランドに最初の羊を放牧したのは、あの歴史にも名を残した「ジェームズ・クック」だ。

エイベル・タズマンに次いで史上2人目にニュージーランドに上陸したジェームズ・クック。彼はニュージーランドの詳細な地図を記録し、北島と南島を分けるクック海峡を発見した人物として知られている。

ただ、これらの主な業績は彼の一度目の航海で行われたものだ。2度目の航海では伝説の南方大陸の探索のために、再びニュージーランドに立ち寄り、北島と南島の間にある「クイーンシャロット諸島」に停泊、数々の野菜のタネを植え、いくつかの動物を放つという”実験”をしている。島をガーデンに見立て、異国の地に作物や家畜が育つかを見てみたかったのだろう。そしてその中には、メリノ品種の2頭の羊、EWE(=メス羊)とRAM(=オス羊)も含まれていた。

実にさかのぼること約250年も前に放牧された2頭の羊が、数千万頭にも膨れ上がる現代のNZの羊たちの先駆けであった―――、と言いたいところだけど、実際はそうはならなかった。なぜなら、EWEもRAMも、生き残ることはできなかったからだ・・

NZ最初の羊「EWE」と「RAM」は、放牧後わずか数日で中毒死・・

記録にはこうある。1773年5月22日、ジェームズクックはクイーンシャロット諸島の「ship cove」にて2頭の羊「EWE」と「RAM」を放つが、数日後、2頭とも死亡しているのが発見された。先住民に殺された形跡もなく、どうやら何かを食べて中毒死したと判断されたーーと。

今でこそニュージーランドには猛毒植物があるから羊の放牧には必ず「アレ」を駆逐してからでないとまずい、とよく知られているものの、さすがのジェームズクックも、南半球の果てにある土地の猛毒植物には気が付かなかったのだろう。むしろこの場合、羊で済んで良かったと言ってもよいのかもしれない(羊には失礼だけど)。

ニュージーランドには現代にも猛毒とされる木の実がある。「TUTU」と呼ばれる実がそれだ。

象をも殺すNZの猛毒植物「TUTU」

ニュージーランドの猛毒植物、「TUTU(トゥトゥ)」。
割とどこにでも生えていて、低山のトレッキングコース脇から、割と高山地帯にまで分布する、NZではごく一般的な原生植物だ。

ニュージーランド 毒 猛毒 植物 ツツ
tutuの実。

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夏~秋ごろに、日本でいう山ブドウのような藍色のきれいな木の実をたくさん付けていて、見た目はおいしそうでついつい口に運んでみたくなる色カタチをしている。ただし!見た目ではまったく危ない植物とはわからないが、一度に大量に食べると大きな哺乳動物でさえ中毒死してしまうほどの猛毒をその実に仕込んでいる。

TUTUに関して最も有名な逸話は、ダニーデンのサーカスの象にまつわる話だろう。
1957年にサーカスのためにやってきていた象が道端のTUTUの実を食べて中毒死してしまったというのだ。これは今でもTUTUを説明する際に必ず触れられる逸話で、実際僕もいつくかのトレッキングコース上の植物の説明板で「象をも殺すTUTU」の解説を読んだことがある。ほかにも、初期入植者の子供が誤って食べて死亡した事件も数多く報告されており、NZ南島の羊飼いのレポートでは、かつては実に75%もの羊の死因がこのTUTUによるものだったとさえ言われている。

ジェームズクックが放った羊も、牧草なんて無かった時代のこと、きっと「お、食べれそうな植物だぞ」と思って勢いよく食べてしまったに違いない。象さえ倒せる猛毒なのだから、一旦中毒になってしまえばひとたまりもなかっただろう。

NZ最初の羊とTUTU。歴史を知るのは面白い

ジェームズクックのエンデバー号
ジェームズクックのエンデバー号 by Flicker

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今回、ちょっとした別の調べものから「NZ最初の羊」にたどり着き、その死因が猛毒植物による中毒死だったことから、この記事を書いてみようと思い立った。NZは歴史が浅い国だが多くの文献で原生植物や生き物が登場しており、調べれば調べるほどオモシロい事実が出てきてくれる。きっと歴史が浅いからこそ、記録として残る逸話がたくさん残されているんだろう。

今回のNZ最初の羊とTUTUのような、NZの生きものたちが国の歴史をほんの少しだけずらしてしまうような逸話があれば、きっとまた紹介していきたい。

 

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