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かつては賞金首!?なぜNZの山岳オウム・ケアは羊飼いに撃たれていたのか?

かつては賞金首!?なぜNZの山岳オウム・ケアは羊飼いに撃たれていたのか?

マウント・クックやミルフォードサウンドなど、ニュージーランド南島の高山地帯を旅行していて大きなオウムに出くわした、という人も多いだろう。そう、NZ南島には、山岳地帯に住むオウム、ケア(Kea=ミヤマオウム)という珍しい鳥がいる。

世界で唯一、森林限界以降に住む、NZ固有種のオウム・ケア。彼らはオウムだけに賢く、また好奇心旺盛なことでも知られていて、駐車した車のワイパーを引きちぎったり、ハイキング客が休憩している間に帽子や靴を持って行ってしまうなどさまざまな悪戯をして旅行者を楽しませてくれる(!?)。※ケアの悪戯の数々をおさめた動画集を以前記事にしたので、そちらもどうぞ→

これまでキーウィやカカポなど、ニュージーランドのいろいろな鳥をこのHPで紹介してきたけれど、実は南島にはもっと"スゴイやつ"がいる。そのスゴイやつとは、ニュージーランド・南島の山岳地帯のみ生息するとても珍しいオウム、「KEA(ケア、またはキア…

さて、ケアは旅行中によく出くわす鳥だからか、ごく普通に見られる生きものと思われがちだが、実はケアの総数はわずか5000羽程度で、絶滅危惧種に指定されている。しかも、そうなってしまった原因はこれ以上ないほどハッキリしている。ケアはかつては”害鳥”とされ、その首に賞金が掛けられていた過去があったのだ。今日はNZの山岳オウム・ケアの知られざる過去に焦点を当ててみよう。

15万羽もの命が失われる。19~20世紀、ケアは賞金首だった!

ケア photo by Flicker

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ここに一つの興味深い記録がある。
1940年代のマウント・アスパイアリング(現在は国立公園になっている山岳地帯)の農場に、”プロのケア・ハンター”を名乗るアルビー・コリンズという人物がいた。彼は名前の通りケアだけを専門に狩るハンターで、プロ一年目で400羽のケアを狩ったという。「一夜で67羽ものケアを狩ったことがある」・・それが彼の最大の自慢話だったそうだ。

なぜアルビー・コリンズがそれほどまでにケアに執着したのかと言えば、もちろんそこに高額な懸賞金が発生したからだ。19世紀~20世紀前半にかけてケアにかけられていた賞金は最大で「ケアのクチバシ一つにつき10シリング」だったという。

Temple(2011)によれば、コリンズが生きていた時代の10シリングは現代の65NZドル(約5500円)に相当する。・・65ドル!車も電化製品もまともに無い古き良き時代において、65ドルは多くの男の目の色を変えるに十分な値段だったろう。一冬で400羽を狩れば合計2万6千ドル。それは当時、目もくらむような金額だったに違いない。

19世紀にはじまった懸賞金が1970年にようやく撤廃されるまでの約100年の間に、意味もなく撃ち落とされたケアの総数は約15万羽にものぼる。なぜそれほどまでに、当時の人々はケアを目の敵にしていたのだろう?そこには、NZの主要産業である羊が深く関わっていたようだ。

なぜケアは羊飼いに撃ち殺されていたのか?

問題となった「羊を襲うkea」の図。 by Reddit

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ニュージーランド南島の羊飼いたちにとって、もっともやっかいだった問題は寒さでも餌の確保でもなく、「ケアに羊を食べられないこと」だったという。・・ケアが生きた羊を襲って食べる!?まったく冗談のようだけど、これはたしかに事実としてあった、羊飼いたちの悩みのタネだった。

とはいえ、ライオンが狩りをするみたいに押し倒すわけではなく、ケアは行き倒れた羊をついばんだり、弱った羊の背中を”つついて”お肉を拝借していたようだ。でも傷がつけば当然商品価値は下がるし、傷口から別の病気にもかかる。ヨーロッパから身一つ、命がけでやってきた当時の入植者たちにとって、NZのずる賢い鳥が目の敵にされたのも無理はない。

のちの研究から、羊を襲って背中をついばむケアは全体のほんの一部にすぎなかったことがわかっている・・が、それも後の祭り。残りわずか5千羽となった1970年に入ってようやく、懸賞金が廃止されたのだった。

1986年からケアは保護鳥に。ケアに出会ったら暖かく見守ろう

悪戯好きの愛すべき鳥・kea by Flicker

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ニュージーランドの誤った政策から、15万羽も数を減らしてしまったケア。それでも、1986年からは法律で完全に保護され、今では一羽の例外なくケアを撃つことは犯罪となっている。

人間が手を出さなくなったんだから、ケアの数は増えてきている・・と言いたいところだけど、外来の哺乳類(大型ネズミやイタチなど)がヒナを襲うことが大きな問題となり、未だに生息数は増えてはいない。僕たち旅行者がNZの旅先で出会うケアは、懸賞金ハンティングからの生き残りだ。多少の悪戯には目をつむって(!?)暖かく見守ってあげよう。

参考:
・NZ birds online – kea
kea conservation trust 
・NOTED – the bold idea to save the kea 
・NZ birds.com – KEA

 

 

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