ヨーロッパからニュージーランドに白人たちが渡ってくるより、はるか昔からこの地に暮らしてきた先住民族・マオリ族。彼らは深い森だったニュージーランドの植物をうまく利用し、建物に使ったり、医療に用いたり、もちろん食べ物にしたりして、すべてをうまく使って生活を送ってきた。
おもしろいことに、現代でも、東洋の漢方ならぬ「マオリ・ハーブ」という学問がニュージーランドの大学にはあるくらい(僕はのちのち必ずこのコースを取ろうと思っている。)、ニュージーランドではマオリ族がどう植物を利用してきたかという知識はリスペクトされ、広く共有されるようになっている。
さて、今日はそんなNZの植物のなかでも、ちょっとお気楽系というか、面白い使われ方をしていた植物をご紹介しよう。もうタイトルにもなっているけど、マオリ族は「ある植物」をなんと「トイレットペーパー」として愛用してきたというのだ。いったいどんな植物なんだろう?
マオリのトイレットペーパー「ランギオラ」
その植物の名はランギオラ(Rangiora / Brachyglottis repanda)と言って、比較的どこの森にも生えていて簡単に見つけることができる植物だ。ハイキングコース上でもしょっちゅう見かけるから、NZで山歩きをした経験をお持ちなら、どこかの写真に写り込んでいるかもしれない。他の木々に比べて葉っぱが大きく、背丈も5~7m程度なので視界に入りやすい植物だ。(※ただし、南島南部では見られない。)
このランギオラにはおもしろい別名がある。図鑑をみるとなぜか「Bushman’s Friend(木こりのともだち)」とか「Bushman’s toilet paper(木こりのトイレットペーパー)」なんて呼ばれ方もしている。最初そんな説明を読んで、「な・・なんでだろう?」と思っていたけど、それは実際に触ってみるとすぐに理由が分かった。
ランギオラのさわり心地は、”鼻セレブ”級!?
森の中でみかけた、ひときわ大きなランギオラの葉っぱ。優に20センチはある。大きいなぁ~と思ってふと触ってみると、なんだか裏側がキモチいい。
めくってみると・・
なんと、真っ白!細かい毛のようなものがびっしり生えていて、サラッサラだ。なめらかでさわり心地はバツグン。そう、それはまるで・・
質のいいトイレットペーパーそのもの。ブッシュマンズ・フレンドとはよく言ったもので、きっとマオリ族だけでなく、その後やってきたヨーロッパからの入植者たちも間違いなく愛用していただろうと触ってみれば誰もが確信が持つだろう。
実際に使ってみる。
実際、僕はテント一式を背負っての山歩きをしていたとき、どうしても我慢できずその辺にあったランギオラを摘み取って”雉撃ち”に出かけたことがある。恐る恐る使ってみると・・これがまぁ柔らかくてサラサラで使い心地は抜群でした(笑)。マオリが愛用していたというのもうなずけるクオリティーで、NZにある何百と言う植物の中で唯一サラサラの葉を持つランギオラは、まさにそのために在るといっても過言ではない。
薬用シップでもあったランギオラ
文献では「湿布」としても利用していたとされている。ランギオラの葉にはアルカロイドという特殊な薬理作用のある有機化合物が含まれているのをマオリは見逃さず、けがをした部位に貼って傷口を守ったらしい。
古くからマオリ族、そして初期入植者たちにも愛用されてきた植物・ランギオラ。ニュージーランドのハイキング中に出会ったら、ぜひそのさわり心地を確かめてみてほしい。
参考:Wikipedia Brachyglottis repanda
Last Updated on 2022年9月19日 by 外山みのる
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