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批判続出!NZ政府、河川の水質基準引き下げ「90%の川を泳げるように」

批判続出!NZ政府、河川の水質基準引き下げ「90%の川を泳げるように」

ここ数日、ニュージーランドの各メディアはこの話題で持ちきりとなっている。

ニュージーランド政府はこの度、河川や湖の水質改善に関する新たな政策を発表した。
それは、河川環境改善のために、この先23年間で20億ドル(ドル/80円として1600億円)を搬出して河川環境を整備するなどし、2040年までに「90%の河川を泳げる川にする」としたもの。

ところが、この政府の新たな政策は、発表翌日から多くのメディアや環境団体からバッシングを受け、“炎上”状態になってしまっている。「NZの川を泳げる水質にしよう」と一見ポジティブに見えるこの政策、いったいどこがマズかったのだろうか?詳細を追ってみよう。

NZ政府「2040年までに90%の川を泳げる水質に改善」と発表

オークランドの河川

近年、ニュージーランドでは河川や湖の水質汚染が深刻になっている。
以前記事にもしたように(リンク先参照)、2017年初頭のニュースでは「ニュージーランドの河川の5割はすでに泳げないほど水質が悪化している」との調査結果がでた。それを受けてか、今では河川の水質改善は国民の関心事トップ3に躍り出るまでになっている。

夏も真っ盛りになってきた1月終わりのニュージーランド。ビーチや川で水遊びを楽しむ人が増えるこの時期に、意外なニュースが入ってきた。なんでも、ニュージーランドの河川では水質汚染が進み、すでに50%もの河川は「泳ぐのに適さない」ほどになっているという。いったいどういうことなんだろう?自然がいっぱい・環境に優しいはずのこの国で、いったい何が怒っているんだろう。このページでは、ニュースで示された具体的な数値とともに、「ニュージーランドの川の水質汚染」を探ってみたい。都市部の河川は全てNG!水質調査の結果...

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そんな国民的な関心の高まりを受けて先日発表されたのが、『2040年までに90%の河川を泳げる水質に改善する』ための政策発表だった。1600億円もの予算を充てて、主に放牧地を流れる河川の周囲にフェンスを立てて森をつくり、家畜のフンが川に流れ込まないようにすることで水質改善が見込まれるとしたのだ。

放牧地の川にフェンスを立てる、というのは実際とんでもない事業で、その総延長は56,000kmにも及ぶとされる。5万6千キロ!調べてみたら、日本の海岸線の総延長でも35,000kmだった。日本のすべての海岸にフェンスを立てても、まださらに半周くらいできるほどの、途方もない長さのフェンスをこの先30年ほどで立ててしまおうというのだ。これだけ見れば、ずいぶん野心的な取り組みだとも受け取れるだろう。

ところが、実際のメディアや環境団体からの反応は、僕の見た限りではすべて批判的な記事、バッシングの嵐だった。なぜなら、フェンス事業の裏で、政府は現行の「水質基準」を大幅に引き下げていたことがわかったからだ。

NZの水質基準を大幅引き下げ!昨日の「泳げない川」は、明日の「泳げる川」に

先日行ったオークランドのモコロア滝も、川の水は上流の放牧地によってクリーンとは言い難い水だった。

2017年1月の調査結果では「50%の河川は泳げないほど水質が悪化」していると調査結果が出たのにもかかわらず、その翌月にあたる昨日(2月23日)の発表ではなぜか「現在72%の河川は泳いでも大丈夫」となっていた。

そう、つまり、ニュージーランドは河川の水質基準を大幅に引き下げ、基準そのものを甘くしてしまったのだ。

ちょっと背景があるのだが、もともとニュージーランドという国はかなり厳しい水質基準を持っていた国だ。
NZの旧・水質基準では、水中のバクテリア数が100mlあたり260とされ(E coli level of 260 per 100ml)、これは世界的な標準、たとえばヨーロッパやアメリカの基準である「500 per 100ml」からすれば倍近く厳格だったことがわかる。

ところが、今回の政策に伴って、ニュージーランドの新たな水質基準は「540 per 100ml」となってしまった。政府は「WHO(世界保健機関)の推奨する、世界的な標準に合わせただけだ」と反論しているが、昨日まで「汚染があります」とされていた川なのに、明日からは「泳いでいいですよ」と言われても、それで納得せよというのは難しい話かもしれない。

クライストチャーチの「泳ぐな!」の看板 by Flicker

 

旧基準では、川に入ってバクテリアや病原菌によって病気になる可能性は1%とされていた(100人に1人)。これが、現行の新基準では5%になり(20人に1人)、一気に5倍ものリスクが許容されたことになる。これをメディアは、「たとえば学校の遠足で川に泳ぎに行ったら、一クラスに1人は病気になって家に帰るということだ。誰がこのリスクを受け入れるというのか?」。”it was pulling the wool over peoples’ eyes by changing the goalposts”(ゴールを取り換えて人々をだましただけだ)と評し、手厳しい。

このニュースに関して、僕はこう思う

この記事をここまで読んでいただいた方ならもうお分かりと思うが、僕はこの政策には若干批判的な立場だ。

まず、フェンスを立てて川べりを森にするというが、たかが1m程度の細いベルトのような森を作ったところで、その森に牛の排泄物の浄化作用を期待するにはちょっと無理がある。ちょっとでも雨が続けば(そして雨天時こそ排泄物が流れるのだが)、浄化の間に合わない汚水がこれまで通り川に流れ込んでしまうだろう。

僕の住むオークランドでは、確かに河川の汚染は激しい。
西部のワイタケレの森によくトレッキングに行くが、たいていの川は上流に放牧地があるから多くの川は汚染されていて、川底の岩には妙な茶色いぬめりがある。そういえば北島のグレートウォーク・「ファンガヌイリバージャーニー」で川下りに挑戦した時も、川底には外来種のコケがものすごい量が繁茂していた。こういうのを見ると、「ニュージーランドよ、おまえもか。」と、かなりがっかりする。


(僕が2016年に撮影した、グレートウォークのカヌー旅「ファンガヌイリバー」最中の川の様子。おびただしい藻が繁茂している。DOCに聞いたら100年前は無かった外来の藻とのこと。)
きっと短期旅行でNZを観てまわった方は、「海も川もすごくきれいだった!」と思うかもしれない。でも、それはひょっとしたらNZの「観光客用の顔」なのかもしれない。新首相のイングリッシュ・ビルは「経済と環境のバランスを取りたい」と言っていたが、果たしてこのままでうまくいくのだろうか。今後の政策も見守っていきたい。

参考記事:

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