大きなオレンジ色の蝶が青空を舞う姿は、夏のニュージーランドの風物詩とも言っていいくらいよく見かける光景だろう。オレンジの蝶とは、ニュージーランド最大の蝶として知られるモナーク・バタフライ Monarch Butterfly(和名はオオカバマダラ)。色が派手なおかげで遠くからでも見つけられる、NZで最もポピュラーな生きものだ。オークランドに住む僕も、車に乗りながら「今日は何羽が横切るかな?」と、10、20羽と数えてはあまりの多さに数えるのをやめる、ということをよくやっていたものだった。
ところが、ここ数年(2018以降~)になってからというもの、運転中に横切るオオカバマダラの数がめっきり少なくなってしまった。本当に数が減ってしまったんだろうか?そうだとしたら、なぜ?現地のTVやネットのニュースでも扱われるようになってきたこのトピックを今日は取り上げてみよう。
NZのオオカバマダラが減っている?
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ニュースサイト「NewsHub」にて、2020年ごろにWhere have all monarch butterflies gone?(オオカバマダラはどこに消えた?)という記事が掲載された(最後にリンクあり)。これによると、同国の団体「モス・アンド・バタフライ・ニュージーランドトラスト」の会員340人にアンケートを取ったところ、約半数もの人が「今シーズンは一度も卵や幼虫を見ていない」と回答したという。
別のニュースサイトでは、南島のネルソンに住む愛好家の調査で「オオカバマダラはここ5年ほどで70パーセントも減少している」との報告があったという。
やはり僕の悪い予感は当たっていて、オークランドだけでなく、ニュージーランド全土でオオカバマダラは減少傾向にあるようだ。でも、悪天候やおおきな山火事があったわけでもないし、いったい何が原因になっているんだろう?
オオカバマダラの減少・・その原因は、外来種の増加にあった!
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僕は本業で造園やお庭の剪定などを行っているので、言ってみれば一年を通して住宅地や郊外の森/生きものの様子を眺めている。オオカバマダラの減少は近年になるにつれて顕著で、2019-2020の夏に至っては生きている幼虫を野外で見つけたのはわずか一回(!)しかなかった。
そして、その代わりに近年増加したのが、蜂との遭遇だった。
それも、ミツバチとかかわいいヤツではなく、アジアン・ペーパーワスプと呼ばれる、いわばアシナガバチばかり。名前の通り原産は日本を含めたアジアで、NZでは外来種であり駆除の対象になっている。そんなのが、垣根の剪定をするとわらわらと飛んででてくるようになってきたのだ。(でも、不思議なことに見た目は日本のアシナガバチなのに、かなり弱気なやつで襲ってはこない。きっと、日本以外の別のアジア国が原産なんだろう。)
前項で紹介したニュースでも、やはりオオカバマダラ減少の主な原因は蜂による捕食だろうと言われている。ほかにも、同様に外来種である南アフリカ・カマキリや、ヨーロッパからの外来の蜂など、とにかくあらゆる外来種に狙われてしまっているのだ。
オオカバマダラは自然環境の代弁者。僕らは何をしるべきなのか
上述の通り、ニュージーランドのオオカバマダラは同国最大の蝶だ。昆虫界に限ってみれば割と生態系のトップの方に位置するはずで、その生き物が激減するというのは、ただ一種類の昆虫が減少中・・という易しい話ではないように思う。(こういう地域の生態系を代表する生き物を、指標生物と呼んだりする。)
人間の目には見えない複雑なエコシステムのどこかに大きな揺らぎがあるからこそ、人間の目に見えるオオカバマダラに影響が出始めているのだろう。外来種の管理や、これまた近年よく言われる農薬などによる汚染など、エコシステムのどこにどんなナイフが刺さっているのか、注視していく必要があるのではないだろうか。
参考:
Newshub : Where have all monarch butterflies gone?
Stuff.co.nz : Wasp Wipeout: Wasps behind ‘dramatic’ decline in butterflies in Nelson