NATURE ニュージーランド

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美しいルピナスの花が駆除の対象!?NZでルピナスが嫌われている理由とは。

雪を冠した山々と雪解け水の川、そして平地に咲き乱れるルピナスの花・・・ニュージーランドのガイドブックやパンフレットの表紙には、きまって色とりどりのルピナスが咲き乱れる写真が使われている。きっとルピナスという花を知らなくても、どこかで見たことがある方も多いだろう。

ニュージーランドのルピナス。ガイドブックの表紙を飾ることも多い。by Flicker

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でも、実のところ――ちょっと意外で、残念なニュースではあるけれど――この野原一面のルピナスはニュージーランド現地では「雑草」として扱われている。それもただたの雑草ではなく、たとえばブラックバスやブルーギルのように、「侵略的な外来種」という駆除の対象にまでなっている。どうやら、パンフレットの平和な絵と現実の扱いはずいぶん違いがあるようだ。今日はこのニュージーランドのルピナスを巡る話を書いてみよう。

ニュージーランドのルピナスはどこからやってきた?

Russell lupins.
上で侵略的な外来種と書いた通り、ニュージーランドのルピナス(正確にはRussel Lupin)はもともとニュージーランド原産ではなく、アメリカ大陸の植物だ。これが品種改良されてヨーロッパでもてはやされ、ヨーロッパからの移民がNZに種を持ち込んだのが最初とされる。

「ルピナス・レディー」として有名なコニー・スコットの話は特によく知られている。
1940~50年代にかけて、ヨーロッパからテカポ湖周辺に移り住んだコニーは、お花の少ない環境を少しでも彩ろうとルピナスの種を撒き、青やピンクの花が咲き乱れる環境づくりに生涯を注いだという。ルピナスは養分の少ない土地でも育つことからヒツジ飼いにも重宝された。こうしてテカポ湖~クイーンズタウン周辺のいたる所にルピナスが植えられ、現代までつづく色とりどりのお花畑が広がるようになった。

当時、身一つで命がけでやってきた移民の人たちを悪くいうことは決してできないけれど、やはり当時の人々にもうちょっとだけ先見の明があれば・・と思わずにはいられない。50年後には増えすぎたルピナスを毎年何千万円もかけて駆除しなければならなくなっていることを知ったのなら、ルピナス・レディーはそれでもタネをまいただろうか?

ルピナスの見ごろは11~12月。でもその光景は見る人によって180度異なる

Lupin

ルピナスのシーズンはニュージーランドの春~初夏にかけてで、11月~2月ごろまで次々にお花が咲く。
写真映えする最盛期は11月中下旬~クリスマス前後まで。テカポ湖のルピナスは11月下旬ごろがピークなので、テカポより南へ行くにつれてピークは少しづつ後にずれ込んでいく。

この時期にはルピナスの写真を撮りに、世界中から観光客がやってくる。
たしかに写真はものすごくきれいで、まるで絵葉書の世界のような美しさだ。
でも、事情を知る地元の人にとっては、残念だけど同じ絵葉書の世界も「不毛の大地」でしかない。実際にルピナスの繁る川岸を歩いてみてほしい。傍から見るとかわいげのある植物も全長は1mを超え、歩きぬけるのが困難なほど茂りに茂っている。実際に触れてみると、繁殖力がとても強い植物であることは一目瞭然だ。

どうしてルピナスは駆除の対象となるのか?

Black-fronted Tern/Tarapirohe
Black fronted tern

問題になっているのはこのルピナスの繁殖力で、放っておいたらニュージーランドの高山帯の川岸や平地のすべてを埋め尽くしてしまうと言われている。

ルピナスが川岸を埋め尽くしてしまうと、NZ南島の高山地帯の川岸に適応した生き物たちは生きていくことができない。たとえばBlack Stiltというセイタカシギの一種や、banded dotterelやWrybill(チドリの一種)、Black Fronted-Tern(アジサシの一種)などはまさにルピナスに繁殖場所を奪われている種だ。彼らは見通しのきく小石がごろごろした川岸が必要だが、そこはルピナスのかっこうの繁殖場所になってしまった。一つの種を絶滅の縁に追い込んでまで見たい景色に、いったいどれだけの価値があるんだろう?

ニュージーランド南島では、すでに毎年何千万円という予算を投じて、国立公園内のルピナスの駆除が行われている。(たとえば2014-15年のマッケンジー盆地の駆除作戦だけで約1,200万円の予算が投じられた)。とはいえ、観光業が国の主要産業でもあるニュージーランド。残してもいい場所にはルピナスを残し、貴重な生き物たちの生息域では駆除するなど、観光と環境を両立させた対策が必要になってくるだろう。僕たち観光客にも、環境維持の一端を担う仕組みがあってもいい。

ともかく僕がこの記事でいいたかったのはルピナスを取り巻く現実を知ってほしいということ。きれいな写真だけでなく、ニュージーランドの失敗からの学びも持ち帰ってほしいと思って、ちょっとまじめな記事を書いてみた。

参考URL:
National Geographic – War of the Lupins
Rootsweb – Plants that poison – Lupins line the roads in the Mackenzie in South Canterbury, N.Z. around Christmas time –  invasive but attractive.

ABOUT THE AUTHOR

園芸/造園/個人ガイド/コラム外山みのる
ニュージーランド(オークランド)在住。20歳でNZワーホリ後、海外自転車旅や山小屋バイト等を経て再びNZへ。移住を目指して家族で奮闘中。お仕事は園芸や造園、個人ガイド、コラム執筆。

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