レンタカーやバスの車窓から、あるいは郊外の公園を散歩をしていて、青っぽい羽と赤いくちばしをもった鳥を目にしたことはないだろうか?ニュージーランドが初めての人にとっては、なんとなくNZらしい生きものに出会えてうれしくなる鳥であり、またNZをよく知る者にとっては、逆に見慣れすぎて「またいるね」くらい生活の一部と化している鳥・・そう、この鳥、プケコ。
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そういえばこの『Natureニュージーランド』でもプケコは当たり前すぎてしっかり記事にしたことは無かったけれど、今日は改めてNZの野鳥・プケコを取り上げてみたい。でも「クイナ科セイケイ属の鳥で~」なんて書いてもツマラナイので、ここでは僕が常々プケコについて面白いなぁと思っていることを7つ取り上げてよう。
プケコの小話1:最もよく見られるNZ在来種
いろいろな理由からニュージーランド在来の鳥たちというのは数が減少している種がほとんどなのだけど、プケコに限っては人間がNZの地にやってきた後も数を維持している数少ない鳥だ。というのも、彼らは飛べるし、ファームやちょっとした緑がある公園みたいな開けた環境なら生きていくことができるから。
そんなタフな(!?)ライフスタイルのおかげで、道路わきの緑地帯や公園でも見られるので、短期旅行者でも割とカンタンに目にすることができる。プケコは、”ニュージーランドで最も普通に見られる在来種”の一つと言っていい。
プケコの小話2:reluctant to fly – 飛ぶのは好きじゃない
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僕がまだニュージーランドにきて間もないころ、鳥の名前を覚えようとオークランド博物館に出かけたことがあった。生きもの紹介コーナーに足を運び、鳥の紹介文をかたっぱしから読んでいったのだ。そこにはプケコのはく製もあったのだが、添えられた紹介文は10年以上たった今でもなぜか鮮明に覚えている。そこには、短くこう書かれていた。「reluctant to fly」。・・リラクタント? 単語が分からず、電子辞書を開いてみたらついつい笑ってしまった。reluctantは「いやいやながら・しぶしぶ」という意味であり、博物館ではプケコは「しぶしぶ飛ぶ鳥」と解説されていたのだった。
まさにプケコはしぶしぶ飛ぶ鳥だ。公園で出会っても基本的には歩いてヒトと距離を取ろうとするし、こちらが走って追っかければプケコも走って逃げていく。羽はあっても、飛ぶのは最後の手段と心得ているようだ。
プケコの小話3:プケコはオーストラリアからやってきた
プケコはニュージーランド固有種ではなく、在来種の扱いになっている。つまり「NZ以外でも見られる種」ということで、オーストラリアにもまったく同じ鳥が生息している。オーストラリアではちゃんと英語名があって、Purple swamp hen。紫色の湿地にすむクイナ科の鳥、という意味だ(ちなみにプケコはマオリ語)。
もっと言えば、オーストラリアだけでなく、プケコは世界中に分布している種でもある。ニュージーランドに住むのは、その世界に分布する6亜種のうちの1種、ということらしい。(詳しくはwikipedia[セイケイ]へ)
プケコの小話4:飛べない鳥「タカへ」と瓜二つ!?
面白いことに、ニュージーランドにはプケコと瓜二つの鳥、タカへ(takahe)というのがいる。見た目は似ていながら、タカへの方はよりずんぐりしていて飛ぶことができない鳥だ。
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彼らが似ているのは、その祖先が同じだからだと言われている。ニュージーランドのプケコの祖先は、約1,000年ほど前~にオーストラリアからNZに渡ってきたpurple swamp hen。そして、タカへの祖先は1千万年前に同じくオーストラリアからやってきたpurple swamp hen。そう、元は同じ鳥だったのに、早くNZ入りした者たちは天敵のいない平和な土地に適応して、太って飛べなくなってしまったというわけ。きっとさらに1千万年したら、今いるプケコたちも翼を失ってしまうんだろう。進化というのは面白いものだ。
プケコの小話5:プケコのヒナの色はなぜか・・!?
毎年春~夏ごろになると、プケコは繁殖シーズンを迎える。
湿地を歩く親プケコ。そしてその後ろをヨチヨチくっついて歩く真っ黒なヒナたち・・ん?真っ黒?!?
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どういうわけかプケコのヒナは、こんな全身真っ黒な色をしている。
でも、どうして黒なんだろうか?太陽光を吸収しやすいから??でもそうすると、同じくNZに生息する黒鳥のヒナが真っ白なことは説明できなくなる・・。この記事のために調べてみたけれど、その理由まではわからなかった。ただやはり、ヒナの色は進化の中で選択したはず、きっとそれぞれに意味があるのだろう。
プケコの小話6:植林の邪魔をするお調子者
ずっと前にオークランドの沖合の島「モツオラ島 Motuora Island」の5日間の植林プログラムに参加したことがあった。一日中汗水たらして苗木を植え、翌日、続きをしようと同じ場所に戻ってきたときの驚きと言ったらない。植えたはずの苗木の半分近くが、何者かに掘り返されてしまっていたのだ。その犯人は・・そう、プケコ。彼らは苗木の柔らかな根っこを食べたくて、夜な夜な植林作業の邪魔をしてくれるのだ。
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この島に限らず、いまNZでは植林プログラムが盛んだが、プケコによる被害は後を絶たない。ちょっと残念な話だけど、島によっては増えすぎたプケコを間引くことさえある。プケコに罪はないとはいえ、駆除となると少し考えてしまうのは僕だけではないだろう。
プケコの小話7:お土産店ではキーウィに並ぶ人気者
赤いくちばし、青や紫の羽・・派手な見た目のプケコは、地元のアーティストにとってもインスピレーションの沸く対象のようだ。
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お土産店に行けばキーウィや羊の置物に並んで必ずプケコも置かれているし、どの町にいっても地元アーティストの開くお店ではプケコをあしらった絵画や小物がおいてある。プケコは身近な分だけ、NZ人にとって愛着の沸く生きものなんだろう。
Last Updated on 2022年9月26日 by 外山みのる
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