4月から5月ごろにかけて、秋のニュージーランドでは紅葉がピークを迎える。
僕の住むオークランドでも街路樹や街中の木々が赤や黄色に色づいてきていて(この記事は5月上旬に執筆)、人々の目を楽しませてくれている。南島のアロータウンという町では毎年この時期になるとオータム・フェスティバルと題して紅葉を背景に開拓時代に思いを馳せるイベントが盛大に開かれる。日本と同じように四季のあるニュージーランドでは、紅葉は秋の季節の風物詩と言っていい。
でも、日本と違うのは、ニュージーランドの紅葉する木々は実はすべて外国産の木で、もっと言うとNZ在来種はほとんど落葉さえしないということだ。あれ?じゃあ「紅葉のニュージーランド」というイメージはいったいホンモノなのか・・?!今日は「紅葉」という視点からニュージーランドの自然をひも解いてみよう。
落葉の国・日本。常緑の国・ニュージーランド。
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僕が初めてニュージーランドから日本に一時帰国したときに目にした風景はいまだに忘れられない。夏のNZから真冬の日本へ。成田空港に降り立って、電車に乗って東京に向かっていたその車窓から見えた景色は、葉が落ちて色を失った田園風景だった。「常緑の国から落葉の国に戻ってきた!」。見慣れたはずの風景なんだけど、NZの長期滞在から戻ってくると葉のない木々がたたずむ景色は新鮮な驚きを与えてくれた。
そう、ニュージーランドは常緑の国だ。何千種とあるNZ固有の植物のなかで、冬になると葉をそっくり落とす植物はわずか11種類しかない。日本では紅葉の代表格であるブナでさえ、ニュージーランドのそれは落葉せず年がら年中葉を茂らせているくらいだ(南極ブナと呼ばれる)。
なぜ同じ四季があるのに、日本と違ってNZの森は常緑のままなんだろう?――もちろんそこには明確な理由がある・・けれど、そっちを書き出すとたぶんもう一つ記事が書けてしまうので・・、このページでは、「ではどうして現在のNZで紅葉が見られるのか」――この疑問をまず解いていくことにしよう。
ニュージーランドの紅葉には、初期開拓者の想いがあった
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18世紀に本国イギリスから南半球の未開の地(のちのNZ)にやってきた初期の開拓者たちは、どんな想いで、どんな決意でNZ行きの船に乗り込んだんだろう?期待を抱いた楽天家もいただろうし、期待より不安を抱えた厭世家もいただろう。それでも、彼らが一様に抱いていた感情がある。それは、”郷愁(=ノスタルジア)”だ。
「新たな土地に故郷の風景を再現したい・・!」。そうして、四季のある本国から連れてきた植物たち。それらはつまり、ファームのある牧歌的風景の中に生きる木々たちだった。川辺に生える柳、牧草地にぽつんと立つエルムの木(夏は家畜のよい休憩所になる)、ファームの境界をつくるポプラ、正門から家に続く道沿いに植わったオークの木など・・。これらの木々はニュージーランドの気候にも見事に適応して、数百年経った今、秋のニュージーランドの典型的風景としていわば”オリジナリティ”を獲得するまでになったのだ。
ニュージーランドの紅葉する木々は、ヨーロッパから片道切符でやってきた初期入植者たちがかつて遠い故郷を偲んだその名残・・と言えば、ちょっと言い過ぎなんだろうか?
NZで紅葉する樹の名前を覚えよう。
というわけで、ニュージーランドで見られる「紅葉する樹」は、実は非常に限りがある。以下に主な樹の簡単な名前と写真を載せておくので、せっかくだから覚えてしまおう。名前が分かると、ちょっと親近感も増すはずだ。
・Oak(イングリッシュ・オーク=日本のナラ/カシに相当)
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・Willow(ウィロー=柳)
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・poplar(ポプラ)
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・Glden Elm (ゴールデン・エルム=ニレ科、日本のケヤキのような木)
※以前にも記事にしたので、参考までに。↓
・Sweet Gum (スウィートガム=フウ属、日本のモミジバフウのような木)
※こちらの以前記事にしたので合わせてどうぞ↓↓
・Plane Tree (プレーン・ツリー=プラタナス/すずかけの木)
Last Updated on 2022年9月26日 by 外山みのる
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