NATUREニュージーランド

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NZの象徴と扱われるシダ「シルバーファーン」の見事な生命力

NZの象徴と扱われるシダ「シルバーファーン」の見事な生命力

所要があってオークランドから橋を渡って北側のノースショアと呼ばれる地域に行った。高級住宅街が広がる海沿いの土地がまるまるハイキングコースになっている森林公園があったので、せっかくだからと歩いてみることに。Kauri Point Centennial Parkという森林公園では、意外なほど生命力あふれた植物たちに出会えので、少し紹介してみよう。




オークランドのカウリポイント・センテニアル・パーク

オークランド カウリ 公園

今回歩いてみたのはこの森林公園。Centennial というのは100周年とかそういった意味があるから、オークランド市の成り立ちにちなんでできた公園なのだろう。高級住宅街の隅っこにある森なので、こぎれいな”公園”なのかなと思っていたけど、小さいながらしっかり原生林。ニュージーランドの自然公園というか森のある公園は、こういう「自然を残すところはしっかり残す」とはっきり自然との境界線をつくる発想のものが多いように思う。だからここのように「住宅街に原生林」といった場所が忽然と現れる。

ラッキーなシルバーファーン

シルバーファーン 芽吹き
シルバーファーン

しばらく海岸に向かって森を歩いていると、谷間になった山肌に面白いものを見つけた。シルバーファーン、木性シダと呼ばれる木のように大きく育つNZ固有のシダだ。

背丈は2メートルほどのまだ小さなシルバーファーンなのだけど、こんなに一斉に芽吹いているのはとても珍しい。周りを見ると、谷間でやや湿った環境、大きな木の日蔭という木性シダにとって最高の生育条件。いいところに着地して芽吹けた幸運なやつだ。なんともラッキーなファーンに出会えたなぁと嬉しくなって何枚も写真を撮った。

マオリも利用したシルバーファーン

夜道に置いたシルバーファーン
夜道に置いたシルバーファーン

このシルバーファーンにはニュージーランド人なら誰もが知っている逸話がある。シルバーファーンという名前の由来は、葉を裏返すと緑ではなく銀色をしているからなのだけど、これをかつてのマオリ族(先住民族)は巧みに利用していた。

マオリ族は部族同士の戦闘が夜間に行われる際、仲間同士のやりとりに松明やかけ声を使うことをしなかったという。そうすると敵に場所を悟られてしまうからだ。そこで、彼らは森の植物をうまく利用した。シルバーファーンを裏返して地面におけば、ちょうど月光に反射する天然の矢印と化す。そうして自分の向かった先を仲間に示すことで、無言のうちに敵陣に近づき戦闘を行うことができたのだ。

そんな逸話は転じて現代では「躍動」や「忍耐力」、「力強さ」の象徴となり、有名なラグビーの「オールブラックス」もこのシルバーファーンをエンブレムに使っているほどだ。日本で桜を知らない人はいないように、シルバーファーンはおそらくニュージーランドで一番知られた植物なんじゃないだろうか。

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オールブラックスのエンブレム(ElaKiri.com)

そんなシルバーファーンが新たな”躍動”をめいいっぱい伸ばそうとしている姿というのは、なんて縁起のいい光景だろう。力強く芽吹くシルバーファンは、ニュージーランド版四葉のクローバーと言ってもいいのかもしれない。

Last Updated on 2022年11月16日 by 外山みのる

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