トレッキングやキャンプなど、自然の中で遊ぶアクティビティでの楽しみの一つは、なんといってもそこに住む生き物たちとの遭遇だろう。特にニュージーランドは固有種の宝庫で、鳥の8割ほどが固有種だし、もっと言えば植物もそのほとんどがNZでしか見られないものと言われている。
さて、鳥や植物のほとんどが固有種ということは、当然ながらニュージーランドで見られる昆虫たちもほぼ固有種ばかりだ。とりわけこの国で有名な昆虫と言えば、”世界最重量”の称号を持つ『ジャイアント・ウェタ』だろう。コオロギの羽をむしって太らせたような(?)奇抜な姿をした虫で、なんとその重さは最大71gにも達するという。ハツカネズミが約20gというから、ジャイアント・ウェタはネズミ3匹分の重さもある、超巨大な昆虫なのだ。
ジャイアント・ウェタ・・いったいどんな生き物なんだろう?
僕はニュージーランドに移住してからというもの、一度でいいから現物を見てみたいとずっと思っていたのだけど、先日ついにその夢(!?)を実現することができた。その時とった写真とともに、巨大昆虫「ジャイアント・ウェタ」を解説してみよう。
ティリティリ島でついに出会った、ジャイアント・ウェタ
僕が住むオークランドでジャイアント・ウェタが見たいと思ったら、フェリーで75分の沖合にある”鳥の楽園”こと「ティリティリ島」が候補にあがる。ここは自然保護区の島で、貴重な鳥だけでなく昆虫や爬虫類の保護にも力を入れており、ジャイアント・ウェタもこの島で繁殖をしているのだ。僕はこの島が大好きでよく足を運ぶのだけど、もう何十回目かの訪問の際、ついにジャイアントウェタご本人に遭遇することができた。
初めて“それ”を目にした時の衝撃と言ったらない。
樹の幹に止まっていたのだけど、周囲の葉っぱよりも大きくて、まるで幹にできた大きなこぶのようだった。
「カブトムシよりも大きなコオロギが木にしがみついている」図を想像してみてほしい。そんな奇妙な絵こそ、まさに僕がみた光景だったのだ。世界最重量の称号も伊達じゃない、まさに規格外の生き物。
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上はその時撮った写真。やっぱり写真ではその時の衝撃までは伝わらないけれど、その巨大さは伝わるはずだ。
70種以上もいるウェタ。NZの進化が生んだジャイアント・ウェタとは
ジャイアント・ウェタはニュージーランド固有種にして世界最重量の昆虫として知られている。ジャイアントウェタというのはNZに70種類以上いるウェタの仲間の一種で、名前の通りその中でも最大のものだ。2011年に見つかった個体はこれまで見つかった中で最も大きく、冒頭で書いた通り71gもあったという。どうしてこんなに大きくなったんだろう?
それは以前にも「巨大ムカデ」の項でも触れたように、ニュージーランドという閉鎖的な島が生んだ独特の進化によるところが大きい。外界から遠く離れた天敵のいない島では、生きものは「巨大化」に進化の采をふる。哺乳類がもともといなかったニュージーランドは“進化の実験場”のような土地になり、ほかの大陸でネズミが果たす役割を、NZではこのジャイアント・ウェタが担うように進化をしたようだ。
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しかし、実のところ、そのヘビー級の重さをもってしても、現在は生息数が激減してしまっている。
本来はニュージーランドの北島全土に生息していたものの、天然の生息地は北島の「リトル・バリア島」ただ一つにまで追い詰められてしまった。
原因は奇しくも他の大陸からやってきた哺乳類、特にネズミやポッサムによる被害で、人間がそれらをNZに持ち込んでしまってからというもの、ジャイアントウェタは瞬く間に姿を消していった。ただし、現在では保護活動が進み、上記のようにティリティリ島などいくつかの島で再繁殖が進められるようになっている。
ジャイアント・ウェタはどこで見られる?
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さて、ジャイアント・ウェタに一目会いたい!という奇妙な方は(笑)、どこに行けば見られるのだろう?
最後の生息地である「リトル・バリア島」は一般の立ち入りが禁止されているので、あくまで自然の中でジャイアント・ウェタに出会いたいということなら上述のオークランドの「ティリティリ・マタンギ島」や、ウェリントンの「ジーランディア」がおすすめだ。ただし、夜行性の生き物なので、昼間に出会うには相当の熱意と運がいる。ティリ島なら、島のガイドに「ジャイアントウェタを探しに来たんだ!」と熱を込めて聞き込みをすればこっそり「今日あの木でみたよ・・」と教えてくれる人もいるかもしれない。挑戦するだけの価値はあると思うから、ぜひ時間があればウェタ探しにトライしてみてほしい。
参照URL:
DOC-Giant Weta
The Mary Sue – Man Finds Enormous Giant Weta, Single Largest Insect on Record
★追記:またまた遭遇!巨大な昆虫ジャイアント・ウェタ!動画も撮れた!
Last Updated on 2022年9月25日 by 外山みのる
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