先日新たにニュージーランドのネイティブ・ツリーの図鑑を購入して、知識の補充をしている。『フィールドガイド ニュージーランド・ネイティブツリー』という本で、コケやキノコは載っていないけれど、NZ特有のすべての樹木が細かい写真付きで載っている素晴らしい本だ。ニュージーランドの木は似た葉っぱが多く(概して小さく細い)、幼木と成木で違う葉を持つものも多い。トレッキング最中に名前のわからない木々と出会う回数も、これで徐々に減っていくだろう。
ところでその本の中で、木の実に関する面白いコラムが掲載されていた。
それは、「ニュージーランドの木の実はなぜ赤いのか?」。
木の実が赤いのは、日本人にとっては普通なことだけど、さてその理由は?となると、考えたことがあるだろうか??
今日は『ニュージーランドの木の実はどうして赤(や派手な色)なのか?」について書いてみよう。
僕がであったニュージーランドの木の実たち
コラムを読んだあと、これまで自分が撮りためた写真を見直してみた。
たとえばこれ、以前も「ココナツのならないニュージーランドのヤシ」として紹介したニカウの実。森では圧倒的に目立つ赤い色をしている。
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他にも、NZではどこでも見かけるコプロスマの木の実も、かなり目立つ赤~オレンジ色をしていたり、
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つる性植物のサプルジャック・ヴァイン(supple jack vine)も、
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海岸沿いの低木林でよく見かけるコロキアという植物も、
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思い返すとかなり多くの植物の実は、一様に赤い色をしている。
以前の記事で、「ニュージーランドの花はなぜ真っ白なのか?」という疑問を書いたことがある。その理由は、植物が蛾に花粉を運んでほしくて夜に目立つ「白」を花の色に選んだ、ということだったけれど、さてじゃあ木の実が赤い理由はどうしてなんだろう?
ニュージーランドの木の実はどうして赤い?
随分とひっぱったけれど、ニュージーランドの木の実が赤い理由はただ一つ。
それは、鳥にタネを運んでほしいから。
ニュージーランドという国はまったく哺乳類がいない。そこで植物たちはタネを運んでもらうために、たとえば柿とかアケビみたいにジューシーでおいしそうなフルーツではなく、森で目立つ赤色で、しかもクチバシでも食べられる一口サイズの実をつけるようになったのだ。通りでNZの木の実は一様に小粒で、ド派手は色をした実が多いわけだ。
また、もう一つ木の実に関する面白い事実がある。
小粒なNZの木の実の中にも、規格外と言えるような大きな実をつける樹もいる。たとえば、タライレ(Taraire)やカラカ(karaka)などは親指の第一関節くらいの大きさがある。
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ニュージーランドとしては規格外の大きさの実をつけるこれらの樹。彼らは、かつていた大型の飛べない鳥「モア」にタネを運んでもらいたくてわざわざ大きな実をつくったという。地面に落ちても食べてもらえるよう、果肉の部分が大きく、そして鳥が飲み込みやすいようにNZの大きな木の実はすべて流線型をしているというから、鳥と植物の相互進化というのは本当に不思議なものだ。その背後には、人知を超えた数万年の自然のドラマがあったのだろう。
ちなみに、500年ほど前にそのMOAが(人間が原因で)絶滅してしまってからは、割と大型の鳥、たとえばケレル(ニュージーランド鳩)やコカコ(ハシブトホオダレムクドリ)が細々とその運搬役を担っている。
木の実ひとつとっても、そこには長い進化の歴史と、そして人間との関わりも見えてくる。木の実の色、形、大きさに隠れた秘密を考えながら森を歩くのも、きっと面白いと思う。
Last Updated on 2022年9月25日 by 外山みのる
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