NATURE ニュージーランド

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なぜニュージーランドは外来種を根絶しようとするのか?

「2050年までにニュージーランドの外来哺乳類をゼロにします。」

首都ウェリントンで、当時の首相ジョン・キーがそんな発表をしたのは2016年7月のことだった。ニュージーランド独自の生き物たちを守るために、問題となっている外来の哺乳類、たとえばポッサムやネズミなどを一匹残らず根絶しようという野心的な政策は、当時日本のニュースにもあがるなど世界中を驚かせた。

でも、どうしてニュージーランドはそうまでして外来哺乳類を駆逐したいのだろうか?
このページではこの外来種根絶の政策の詳細と、その背景に迫ってみたい。

ニュージーランド、2050年までに外来種根絶へ

2016年7月にニュージーランド政府が発表した政策はかなり意表を突いたものだった。
それは「2050年までに国内の外来哺乳種を一匹残らず退治する」というもの。ここでいう外来哺乳類種というのは、羊や牛のことではなく、ネズミやイタチ、それにポッサム(厳密には有袋類だけど)などのNZの森を荒らす小型動物のことで、これらの駆逐を、政府主導で国を挙げて取り組むと発表したのだ。

具体的な内容としては以下の政策が挙げられる。

  • 新たに「プレデターフリーNZ」という政府主導の会社を立ち上げる
  • 今後4年間で約22億円かけて関連プロジェクトを支援する
  • 2025年までに、特に沖合の島など、外来種ゼロの地域を拡大させる

この決定の背景には、海を隔てた孤島だったために不思議な進化を遂げてきたNZ独自の自然がある。
ほかの大陸で哺乳類が発展したときもその進化の波が届かず、「哺乳類のまったくいない独自の生態系」ができたニュージーランド。天敵がいないおかげて飛ぶことをやめた鳥が続出し、鳥に密や花粉を運んでもらえない植物たちもほかの国では見られない進化を遂げてきた。

しかし、こうした孤島の生態系というのは外敵に弱いというのが常だ。ニュージーランドも例にもれず、人間が持ち込んだネズミやイタチにはNZの生き物たちはまったく対応できず、すでにニュージーランド固有の鳥類の50%は絶滅してしまったとさえ言われている。国鳥キーウィも数がだんだんと減り、絶滅が心配されて久しい。

「2050年までに外来種根絶」宣言には、観光や自然を売りにするニュージーランドでは、これ以上自然が損なわれる前に手を打っておきたいという狙いが見え隠れする。

NZ外来種ゼロは机上の空論?!新たな手法はあるのか?

鳥の巣を襲うポッサムとネズミ Department of Conservation

 

僕は実はニュージーランドの自然保全活動にはこれまでもかなり時間を割いて実際に活動をさせてもらっている。
たとえばオークランド近郊の鳥類保護区「Ark in the Park」では数週間住み込みでボランティアをさせてもらったことがあるが、この保護区での外来種駆除の取り組みは、一言でいえば“人海戦術”だった。
森中にトラップと毒エサの入った箱を置き、それを毎週のようにスタッフが見回り、イタチやネズミを駆除していくのだ。こうすることで森にできた”鉄のカーテン”の中心部では外来種の数が低く保たれ、貴重な鳥たちを保護することができるというわけだ。しかし、トラップの数も百や二百といった甘い数字ではなく、万に近い数のトラップや毒エサ箱が設置されていた。

たしかにこの手法も効果はあるが、さてニュージーランド中で外来種をゼロにするというにはちょっと無理がある。やはりこれまでにない、画期的な手法が必要になってくるだろう。上で挙げた首相の会見でも、

「現状の方法だけでは不十分で、新しい外来種駆除の技術革新が必要です。」

と正直に置かれている状況を説明していた。この政策発表は、国としての姿勢を内外に打ち出すことで機運を高め、技術革新を促そうというところに、本当の狙いがあるのかもしれない。

NZの「2050年外来種ゼロ」。僕はこう思う

ark in the park 自然 保護 ボランティア 鳥 害獣
保護区内に設置されたペストトラップ(罠)。人海戦術で外来種を退治しているが・・・

2017年現在の最新の手法としては、1080(テンエイティー)と呼ばれる特殊な毒餌をヘリから森に撒いて、ポッサムやネズミなど特定の動物だけを退治するというのが効果をあげ、話題を呼んでいる。しかしこれも一長一短で、ばらまいた毒餌が生態系にどれほど悪影響があるのか未知数な上、周囲に住む住民のペットが誤って食べて死んでしまうといった事件も起こっている。

上述のワナを仕掛けて人海戦術をとるのも、NZすべての森にテン・エイティーを撒くというのも、本当に根絶を目指すなら効果が足りないように思う。これまでにない、まったく別の方法、たとえば外来種への遺伝子操作など――これはこれでかなり議論を呼びそうだが――を世界の先陣切ってやっていくしかないのではないかと思う。

最後に、ナショナルジオグラフィック日本語版の記事では専門家のこんな言葉が引用されていたのでご紹介しよう。

「政府の発表は賞賛に値しますが、これだけの規模の計画をどのように実行するのか、私には想像がつきません – (中略) – それでもこれを実現できる人間がいるとすれば、それは間違いなくニュージーランドの人々でしょう」

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園芸/造園/コラム外山みのる
ニュージーランド在住。20歳でNZワーホリ後、海外自転車旅や山小屋バイト等を経て再びNZへ。お仕事は園芸や造園、コラム執筆等。

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