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頂上目指す登山はもうやめない?ニュージーランドに学ぶ、山そのものを楽しむ歩き方。

頂上目指す登山はもうやめない?ニュージーランドに学ぶ、山そのものを楽しむ歩き方。

日本で登山をすると言えば、それはほとんど100%山頂に登ることを意味していると思う。

僕もこれまでまったく疑うことなく、登山というのは苦労して汗かいてどれだけ高い山に登るかである、と思ってきた。頂上を踏まない登山は成功とは言わない。登山地図の途中で引き返すことになるからだ。

でも、ニュージーランドに移住して、その登山=登頂の概念は日本だけのものだと知った。頂上へは登らず、周囲の森を歩くのがニュージーランドの登山で、そこにはまったく新しい楽しみ方があった。

今日はニュージーランドの登山と日本の登山の比較から、「ニュージーランド式トレッキング」という新しい山の楽しみ方を提案してみたい。

日本とニュージーランドの登山の違い

北岳 山小屋アルバイト アルプス 南アルプス
南アルプスの北岳。僕はここで半年間アルバイトをした。

20代のころ、日本の南アルプスの「北岳」という山で山小屋アルバイトをしていたときから、僕は
「日本人と外国人の登山への姿勢はまるで違うのではないか?」
という印象を持っていた。

北岳においては、日本人は一泊二日の行程でとにかく山頂をめざし、その最短ルートを歩くのがきまりだった。「この小屋から山頂まではあとどれくらい?」という質問を日に何度聞いたことだろう。

それに比べて、時折やってくる外国人登山客は、かならずと言っていいほど大きなザックを抱えて、「次の小屋まではあとどれくらい?」と聞いてきた。つまり、数泊かけて山脈ごと縦走するスタイルを取っている人がほとんどだったのだ。

30代になって、縁あってニュージーランドに移住してきてから、その印象は確信に変わった。移住して、まずは近くの山を制覇しようと、登山地図を買ってみた。しかし、地図からして、これが驚くほど違うのだ。

例えば、先日遠征に行った北島のタラナキ山(2,518m)の地図をみてみよう。
この地図は見事なほどにニュージーランドの登山に対する考え方を反映していた。


なんと、山の地図なのに登頂コースが載っていないのだ!

もちろん登頂コースもあるんだけど、まったく一般的ではない。
タラナキ山で有名なコースと言えば、山の周りを5日間であるく「アラウンド・ザ・マウンテンコース」か、3日かけて国立公園の北部を歩く「ポウアカイ・サーキット」で、どちらも登頂は含まれていない。つまり、日本式の登山で言えば”過程”でしかない、山を歩くことそのものがニュージーランドの登山=トレッキングと言っていい。

タラナキ山のポウアカイ・サーキット
タラナキ山のポウアカイ・サーキット。稜線の中腹にコースが伸びる。

まだ登頂にこだわっているの? ”山歩”を楽しむトレッキングをやろう

僕はニュージーランドに来てから「登頂を目指す登山」を一切やめた。やりたくてもそんなコースがなかなか無いし、何よりニュージーランド式トレッキングの面白さに気が付いてしまったからだ。

タラナキ 高山植物 お花 ニュージーランド 山 植物
タラナキ山で出会った高山のデイジー。

trekkingという言葉の、その響きも、意味するところもいい。なんとなく「登山=Trekking」と訳してしまいがちだけど、辞書を引くとそこには

trekking = go on a long arduous journey, typically on foot.

とあって、必ずしも登頂を意味しないことが分かる。

そういう意味でも、ニュージーランドの登山というのは「トレッキング」、もしくは、現地特有の表現として「tramping=トランピング」と言った方が的を得ていると言っていい。

ニュージーランドの森を歩くトレッキング
ニュージーランドの森を歩くトレッキング

ニュージーランド式のトレッキングは、その地域の自然そのものを歩き、楽しむことが主眼にある。登頂はあくまでサイド・トリップ。天気や時間が許せば登ればいいし、そうじゃないなら山小屋でくつろいだり、出会った仲間とおしゃべりする方に時間を振ろう。川があれば泳ぎ、鳥や生き物に出会ったらカメラをしまって静かに佇み、彼らとの貴重な時間をただ共有しよう--。

せかせかしない、急がない。目の前の自然を心から愛でる。そんなニュージーランド式の森の歩き方ができれば、僕らの”登山”ももっともっと幅が広がっていくように思えてならない。

ニュージーランドの森。木性シダとコケが繁茂する太古の森だ。
ニュージーランドの森。木性シダとコケが繁茂する太古の森だ。

登頂を目指すのではなく、その自然を心から楽しめるようにプランを練ろう。麓と頂上を繋ぐルートではなく、山小屋と山小屋、テント場とテント場をつなぐコース設定をしてみよう。それだけで、頂上はサイドトリップになり、山を歩くこと自体が目的になる。そうすれば、きっと見えてくる風景が違ってくるはずだ。

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