僕がNZに移住してきて驚いたことの一つに、カワセミの多さがある。
カワセミと言えば日本では清流の鳥として知られていて、”空飛ぶ宝石”なんで呼ばれ方もするくらい、見れたらラッキーの珍しい鳥だ。
しかしニュージーランドでは本~当によく見かける。川沿いだけでなく、森の中、ビーチ、さらには街中の公園。一度鳴き声を覚えると日々の生活の中でさえ頻繁に遭遇することができる。
そんなカワセミ、実は先住民マオリ族にとっては『神聖な鳥』とされている。今日はカワセミがニュージーランドで神聖とされる理由と、鳴き声などの見分け方を紹介しよう。
日本のカワセミとは別種!
カワセミ、英語ではKingfisher(キングフィッシャー)、つまり魚とりの名人と名付けられたこの鳥は、日本でもニュージーランドでも同じ名で呼ばれるが、実は北半球と南半球では種類はまったく別もの(!!)だ。
日本のそれは、Common kingfisher で、学名はAlcedo atthis。
対してニュージーランドのそれは、Sacred kingfisher で、学名はTodiramphus sanctus。NZだけでなく、オーストラリアやニューカレドニアなどにも分布する。
ニュージーランドのカワセミは、日本のカワセミと比べると、住む場所によるのだろうか、若干丸っこく、羽根の青味もうすいのが多い。なぜ”Sacred”=神聖とつくのかの説明は、あとに譲ろう。
カワセミは鳴き声でかんたんに見分けられる
よく高い木の枝や海辺の崖にとまっているので、なかなか間近で見ることが難しいNZのカワセミ。僕はいつも目視ではなく、彼らの鳴き声を頼りに探している。いや、探さなくても、一度聞き覚えてしまうとどうしても耳に入ってきてしまうから、散歩をしているとあちらから居場所を教えてくれるような形で見つけている。
鳴き声を聞いてみよう。
ケッケッケッケッケッケ・・・という甲高い声は一度聞くと忘れられない。
マオリは絶対にカワセミの羽をとらない
僕がカワセミに関して面白いなと思うのは、先住民のマオリ族にとってカワセミは神聖な鳥だということ。捕えて食べたり、羽をむしってマントを作ったりはしなかったといわれている。
しかし、マオリ族と言えば鳥の羽を使ったマントや飾りものを作ることで知られている民族。何百羽もの飛べない鳥・カカポの羽を使ってマントをつくったり、今は絶滅してしまったフイアという鳥の羽を権威の象徴のように使っていたりと、羽はマオリにとって重要なものだったはずだ。それなのに、あんなに青くて美しいカワセミの羽根だけはあえて利用してこなかった。これはいったいどうしてだろう?
マオリ族にとって神聖なカワセミ
少し話が逸れるようだが、マオリ族はたくさんの伝説や神話を語りつぎ、物語の中に生きてきた民族だった。生きものにもそれぞれ役割や物語があり、特にトカゲは森の生命エネルギーを守るガーディアン( guardians of the mauri of the forest)として大切に扱われていた。
しかし、そのトカゲを白昼堂々狙って食べてしまう鳥が一種類だけいた。もちろん、それがカワセミだったのだ。ガーディアンの上位にいる存在として、畏れ敬われていたカワセミ。見晴らしのいい枝先に止まる習性も、きっと森の守り手と敬われた理由の一つだったんだろう。
実は南太平洋の国々にも、カワセミを海や波をつかさどる神聖な鳥として扱う風習がある(そのため、英語ではsacred kingfisherとなっている)。マオリ族の祖先の多くは南太平洋からきたといわれている。NZでカワセミが神聖化されたも、きっと偶然ではないのだろう。
- 参考HP
nzbirds.com – The kingfisher
NZ birds online – Sacred Kingfisher
Last Updated on 2022年9月20日 by 外山みのる
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