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ノースランドの最高峰登山・・敗退!なんともNZらしい途中下山の理由とは?

ノースランドの最高峰登山・・敗退!なんともNZらしい途中下山の理由とは?

ここ最近、「NZ各地域の最高峰を登ろう」とテーマを持って登山をしている。前回オークランド地域の最高峰に登ったので、次はノースランド地域(オークランド以北の全域)の最高峰に行こうと、週末をつかって遠征に行ってきた。

ノースランド最高峰は巨木カウリで有名なワイポウアのすぐそばにあり、山の名はMt.Te Raupua (テ・ラウプア山)という。標高はわずか781mと日本人からすれば低山の部類なんだけど、僕はなんとこの遠征に失敗!!してしまった。コースの途中までは行けたのだけど・・。敗退した原因も、考えてみるとなんとも“ニュージーランドらしい”理由だったので、コース紹介とともにお伝えしてみよう。




ノースランド最高峰登山へ!目指せ、ワイマ山脈のテ・ラウプア山

waima forest

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ネットで調べてみると、どうやらノースランド(NZ北島・オークラ以北の細長い地域全域)の最高峰は、「Waima Forest」という山域にあるMt.Te Raupuaという山らしい。標高はたったの781m。これは日本の筑波山くらいの標高だから、日帰りでも何とかなりそうだ。ただ遠隔地にあるからかほとんどネット上に登山ログがなく、仕方なくDOC(環境省)HPの登山地図からおおよその所要時間を割り出して、現地に向かった。

近くのキャンプ場に前泊して、翌朝の9時に登山口に到着。
あいにく雨が降ったりやんだりで、空は厚い雲に覆われていたが、時折雲の切れ間から山々が顔を見せてくれている。案内板の前の小さな駐車スペースに車を停めると、さっそく雲の向こうにあるはずの山頂を目指して歩き出した。

waima forestのノースランド最高峰を目指す。未舗装の道沿いに、小さな看板。
waima forestのノースランド最高峰を目指す。未舗装の道沿いに、小さな看板。
登山口の案内板。最高峰te raupuaまで所要時間はかかれていなかった。やはり実際に登ってみるほかなさそうだ。
登山口の案内板。最高峰te raupuaまでの所要時間はかかれていなかった。やはり実際に登ってみるほかなさそうだ。

 

日帰りで登頂を目指すが・・。コースの先に見たモノとは

最初のうちは牧草地をいくつか横切り、牛の糞をよけながら朝露にぬれた芝生を歩いていく。ニュージーランドの田舎のトレッキングコースというのはたいていこんな感じだ。山の麓の牧草地(私有地)のフェンスをいくつか超えて、お目当ての森に入っていく。

森自体は亜熱帯に近いノースランドだけあって、素晴らしい原生林だった。
木性シダ、カマヒ、カヒカテアと言ったNZ固有の木々が生い茂り、NZのノースランド地方でしか見られない樹「マカマカ」の姿もあった。雨が多いからだろうか、すべての木々は上から下までみずみずしいコケで覆われている。

ノースランド最高峰のトラック、Taita Bride Track。小川も多く、緑が濃い。
ノースランド最高峰のトラック、Taita Bridle Track。小川も多く、緑が濃い。

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キーウィやコカコ(和名:ハシブトホオダレムクドリ)という絶滅危惧種の鳥が生息する森だからか、害獣駆除のトラップがコース沿いにあり、人の出入りがあることでコース自体もよく整備されている。標高も少しずつ、少しずつ上がっていく。足元に根っこが多くて速度は出ないが、総じて歩きやすい印象だ。

小川の音を聞き、鳥のさえずりを聞き、あっという間に時間が過ぎていく。いい森を歩くと、いつも時間の流れが速い。

アスプレニウム・バルビフェラム。NZ固有のシダ。僕はNZで一番好きなシダだ。子どもは親の葉の上で育つ。
アスプレニウム・バルビフェラム。NZ固有のシダ。僕はNZで一番好きなシダだ。子どもは親の葉の上で育つ。

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さて、麓から歩き始めて2時間で、道の前方に案内板が見えてきた。つまり山をある程度登り切り、稜線部分に出たのだ(と言っても森の中だけど)。

ここからは稜線を貫く「Waima Main Range Track」に乗り換え、山頂への長いアタックをかける予定になっている。

この時点で、時間は午前11時。日没が17時ごろで、たった今登った道を下るのにまた2時間かかるとすれば、山頂アタックは往復4時間以内で収めないと厳しそうだ。そんなことを考えながら看板の前まで歩いていくと・・、そこには衝撃的なことが書かれていた。

麓から登るTaita Bridle Trackの終点にあった案内板。そこには何と・・・

この交差点は「オラオラ・サドル」なんて名前らしい。面白いな・・なんて思っていると、その下には・・

「← Te Raupua Summit  3H」

か・・片道3時間!?
つまり頂上アタックはここからさらに往復6時間!!これじゃ、今からアタックをかけたのでは、日没までに麓に降りれない・・。つまり、ノースランド最高峰は往復10時間はかかるコースだったのだ・・。

経験上は稜線歩きは時間がかからない(等高線が緩やか)のが普通なのだが・・地図に載らない細かい上り下りが激しいコースなんだろうか?たとえ急いだとしてもどうにも間に合いそうにない。結局その場でコーヒーを沸かしてランチをゆっくりとり、そのまま来た道を戻ることにしたのだった。

山頂を目指さない“ニュージーランド流登山”

日本では「(地域の)最高峰」へのコースはそれなりに人気があるものだけど、ニュージーランドという国はとにかく山頂に登るということにまったく興味がないな、と僕は常々思う。今回のコースなんてその最たるもので、ネット上に一切の登山ログは転がっていなかったし、ふもとの案内板にさえ「最高峰」の表記がなかった。

僕は登頂を目指すのが日本式登山、山歩きそのものを目的に歩くのがニュージーランド式登山だと思っている。どちらが良し悪しということではないけれど、僕個人はNZ式の登山が好きだ。幾多に張り巡らされた登山道を自由に組み合わせて、時には山小屋(ハット)やテント場を使って、その森そのものを味わうことに意識を置くような森の歩き方。成功/失敗にとらわれることなく、ただただ自然に溶け込むように歩くNZ式登山なら、心からその山を楽しめるような気がする。

今回の登山は目的が果たせなかった点は残念だけど、これもNZ式登山ということで、ノースランドの山々を存分に味わうことができて良かったと思う。

テ・ラウプアを登頂するには?今考えるベストルート


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とはいえ、この記事はノースランド最高峰をめざすという趣旨の記事なので、僕のおすすめするテ・ラウプアへの登頂の仕方を書いておこう。

最短はやはり僕が歩いた「Taita Bridle Track(往復4時間)」から「Waima Main Range Trackで頂上まで(往復6時間)」がベストだと思う。10時間かかるが、日の長い夏なら余裕で日帰り登山ができるはずだ。

もしくは、Waima Forestの北西側の「Mountain Road Exit」から歩きだし、途中にある山小屋「Frampton’s Hut」に泊まって山頂を目指すこともできる。こちらなら山小屋から往復8時間だ。

ちなみに、地図を見てもらうと分かるけれど、山頂周辺の位置関係としては
M Road Exit —(1H)—Frampton’s Hut—(4H)—Mt.Te Raupua—(3H)—Taita Bridle Track終点
という感じになると思う。
もしやってみたいと思う人がいれば、参考にしてほしい。

リンク:DOC(環境省)- Waima Forest

日本で登山をすると言えば、それはほとんど100%山頂に登ることを意味していると思う。僕もこれまでまったく疑うことなく、登山というのは苦労して汗かいてどれだけ高い山に登るかである、と思ってきた。頂上を踏まない登山は成功とは言わない。登山地図の途中で引き返すことになるからだ。でも、ニュージーランドに移住して、その登山=登頂の概念は日本だけのものだと知った。頂上へは登らず、周囲の森を歩くのがニュージーランドの登山で、そこにはまったく新しい楽しみ方があった。今日はニュージーランドの登山と日本の登山の比較...

Last Updated on 2022年9月25日 by 外山みのる

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