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前後篇でお伝えしているコロマンデル半島「ピナクルズ山」一泊二日のトレッキング。前篇では概要と登りの様子を取り上げてみた。この後篇では、山小屋の様子と頂上アタック~下山までを書いてみよう。
特に、ピナクルズ・ハット(山小屋)のスタッフとの会話は印象的だった。
ハットのワーデン、レスター氏は日本通だった
峰に出て、ようやく雲の切れ目にハットが見えてきた。森に囲まれた、雰囲気のよさそうなハットだ。
たどり着いた僕らを待っていたのは、見たこともないほど大きくて立派なハットだった。
玄関から天井の高い吹き抜けの廊下がのび、両サイドにこれまた立派なバンクルームがある。キッチンには水もガスもあるし、ガラス張りのテーブル席からは森が見渡せる。定員80名のサービスド・ハット、とは聞いていたが、まさかこれほどとは!
まるで田舎から都会に出てきたおのぼりさんみたくハットの出来に驚いていると、”ワーデン”と呼ばれるハットの常駐スタッフが僕らに声をかけてくれた。予約の確認と、簡単な施設の紹介をしてくれるのだという。
ゆっくりしゃべる、人のよさそうなキーウィの男は「レスター」と名乗り、名簿の僕の名前をみて「君は日本人だね」と聞いてきた。どうやら、レスターは日本人とは関わりがあるらしい。
説明を聞いた後、ザックを降ろしてベッドを確保してから、レスターが暇そうなところを見計らってもう一度声をかけてみた。
「レスター、日本には行ったことがあるの?」と聞くと、やっぱり「あるよ」との答え。
「ハットのワーデンになる前は、中古車のディーラーをしていたんだ。それで、ビジネスのために名古屋にいったことがある。その時は日本人によくしてもらったよ。」
僕が名古屋出身だというとレスターはそうかい、と嬉しそうに笑った。でも、車の売買ならかなり儲けがあったはず。それに比べればハットのワーデンはそんなに儲からないだろう。どうして山小屋スタッフになったんだい、と聞いてみると、ちょっと思いがけない答えが返ってきた。
「僕はふもとの街Thamesの出身でね。あるときガンを患ってしまって、これまでのように忙しく飛び回ることができなくなってしまったんだ。地元で、自然に囲まれる仕事を求めて、ワーデンを選んだんだよ。給料は大いに下がったがね(笑)8日間駐在すると、6日間休みがもらえる。ワーデンは健康にいい、私に合った仕事なんだ。」
物静かで人のよさそうなレスターにも、ハットのワーデンにたどり着くまで、言葉にはできないいろいろなドラマがあったんだろう。こうして縁あって話ができたことを、僕は嬉しく思った。
頂上アタックはちょっとしたアドベンチャー
さて、翌日になっても雨はなかなか止んでくれなかった。
予報は「曇り」となっているものの、こんな山の中じゃ信用もできそうにない。
紅茶をすすりながら10時まで待ったが晴れ間は出ず、小雨の中頂上へのアタックをかけることにした。
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前篇で示した登山地図を見てみると分かるが、ピナクルズの頂上付近は急な登りになっている。実際に岩に取り付いてみると結構ラフな登りで、梯子や鉄の取っ手がそこかしこにあった。雨で滑る様な岩ではなかったのは幸いだったけれど、頂上までの15分ほどはちょっと神経を使って登った。スリルある、ちょっとしたアドベンチャー気分で一気に頂上へ。759mの山頂からは海が見渡せるはずだけど・・・残念ながら雨でカメラも出せない天候。まぁ、こればかりは仕方がない。
下山途中にはトンデモない巨大なムカデに遭遇し、生きものとの出会いも最後まで楽しみながら山を下った(最後にリンク)。
800mにも満たない山ながら、はやり麓に降りると気温が上がってくる。増水してそこかしこで滝になった雨水で、顔や体を濡らしながら歩いた。また来るよ、と思いながら。
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コロマンデル半島は本当にいい遊び場だ。オークランドからピナクルズまでも車で2時間ほど。日帰りもできるしキャンプもできる。僕はこれから何度も足を運ぶことになると思う。また新しいトレッキングコースを歩いたらここでもご紹介したい。
参考リンク:
DOC公式 – Pinnacles Hut
100%Pure NZ – kauaeranga valley
Last Updated on 2022年9月24日 by 外山みのる
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