ニュージーランドのお土産と言ったら『マヌカーハニー』が挙げられる。抗菌作用が高く風邪予防などに効果があるとして世界的に人気があり、実際に利用した多くの人が効き目があったと認めている。マヌカハニー人気の高まりをうけて、養蜂はニュージーランドの重要な産業の一つにさえなっているほどだ。

さて、マヌカハニーの元になる花は当然ながらマヌカという。実はこのマヌカの木は大変な優れモノで、花の蜜だけでなく、葉から幹までまんべんなく利用できるすばらしい木だ。先住民族のマオリ族の時代から現代にいたるまで、さまざまな方法で利用されてきたマヌカの木。今日はそんなマヌカの木の知られざる効用について書いてみよう。マヌカハニーを愛用している人も、マヌカの木をよく知ることできっとさらにマヌカハニーのイメージ向上につながるはずだ。
先住民族マオリ族の万能薬だったマヌカ

抗菌作用の強いマヌカハニーから連想されるように、マヌカの木自体も多くの薬用効果を持っている。1000年以上もこの地にくらす先住民族マオリ族もまた、余すことなくマヌカの木を利用していたことが伝えられている。
例えば、マヌカの葉は煮詰めてお茶のようにして飲まれていた。これは、風邪止めであったり、胃腸を整える効果が得られたようだ。同じように木の皮を煮た液は下痢止めに、樹液は咳止めや火傷、筋肉痛に。実やタネも赤痢や下痢止めに・・ 数え上げればきりがないくらい、マオリ族は身近な万能薬としてマヌカを利用していた。”復活の木”なんて形容もされるのも納得できる効果の数々だ。
キャプテン・クックも利用したマヌカの木

キャプテンクックと言えばニュージーランドに上陸を果たし詳細な地図を作成したことで知られてるが、彼らの航海ではマヌカをお茶代わりにして飲んでいたという。またマヌカとリムという木の葉を発酵させてビールを作ったという記録もある。どんな味がするんだ・・!?と思ってしまうが、なんでも「口当たりがよく評判がよいビールだった」そうだ。
キャプテン・クック以来、ヨーロッパから入植者たちが続々とニュージーランドにやってきた。彼らは手ごろな大きさのマヌカの木を伐りだし、小屋を建てるのに利用したり、枝を簡易ベッドにしたりと生活に大いに利用した。もちろん、お茶としても飲まれており、物資の少なかった新天地の生活にマヌカの木は大いに役立ち、重宝されたことだろう。
荒れ地を森に変えるマヌカ。自然保護活動への利用

さすがにお茶にしたり木材利用は今ではされていないものの、現代では、自然保護の分野でマヌカは大変に重宝されている。僕個人としても、マヌカといったら真っ先にこの活用法が思い浮かぶ。マヌカは、荒れ地を森に変える木なのだ。
マヌカという木は、杉やケヤキのように大木に育つ木ではなく、せいぜい3~4mほどのShrub(シュラブ)と呼ばれる背の低い森をつくる。ふきっさらしの牧草地に植えても育つ強さがあり、現代のニュージーランドでは自然保護活動で植林をする際には、まずこのマヌカの木を植えて森を育てる。
ニュージーランドの森はマヌカから始まる。荒れ地に植えられた一本のマヌカはやがて人の背丈ほどの小さな森になり、その足元に、ほかの木々が育つ安全な場所を与えてくれる。やがて木々はマヌカの背丈を超えて育ち、生き物たちが暮らせる大きな森ができていくのだ。
先住民のマオリ族をはじめ、ヨーロッパからの入植者、現代の自然保護活動と歴史を通して連綿と利用され、ニュージーランドの自然それ自体にも欠かすことができないマヌカの木。マヌカハニーはその効能のほんの一部のしずくであると言ってもいい。
これほど重宝されているマヌカは、実はニュージーランドでは普通に見かけることができる。旅行に行った際は、お土産にマヌカハニーを買うとともに、マヌカの木も探してみよう。歴史が詰まったマヌカの木に触れれば、きっと貴重な体験になるはずだ。
Last Updated on 2022年9月20日 by 外山みのる
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