12月にもなると、街中、職場、公園、家の中、ありとあらゆる場所がクリスマス一色になるニュージーランド。みんなクリスマスを心待ちにしているのが、どこを歩いても手に取るようにわかる楽しい季節だ。
さて、そんな真夏のニュージーランドを象徴する木として知られているのが、”ニュージーランドのクリスマス・ツリー”こと、ポフツカワ。
日本で桜と言えば春を連想し、すすきと言えば秋を連想するように、NZの夏の代名詞にもなっているポフツカワ。ネットで日本語で検索をかけてみると意外なほど情報が出てこなかったので、この記事で解説してみよう。
NZを代表する花、ポフツカワ
フトモモ科で、樹高25mほどに育つ常緑樹。特にお花は真っ赤でよく目立ち、南半球の初夏~夏にあたる11月~1月ごろにかけて一斉に花を咲かせてくれる。上の写真はオークランドの目抜き通り・クイーンストリートで撮ったもので、街中でも街路樹や公園の木として普通に見かけることができる。
ポフツカワは、12月ごろに真っ赤な花を咲かせることから「クリスマスツリー」なんて呼ばれていて、ポストカード、歌、詩、アートなんかにも頻繁に取り上げられている。いわばニュージーランドの象徴のような花と言っていい。
ポフツカワは北島のみ自生する
意外なことに、ポフツカワの自生地はニュージーランドの北島の、さらに北半分だけだった。「だった」と書いたのは、今では植林されて、いたる所で見ることができるからだ。
つまり、オークランドやロトルアのポフツカワは自生のものだが、ウェリントンやクライストチャーチに生えるポフツカワは植林されたものと言っていい。
自然、「最古」とか「最大」のポフツカワというと、北島の上のほうにその名が知られるものが多い。ギズボン周辺のテ・アラロアという地域に600年と言われる一本があるし、オークランド沖合の島ティリティリ・マタンギ島にも同様に樹齢1000年と言われるものがある。ランギトト島には世界最大のポフツカワ林が広がっている。
僕はティリティリ島の樹齢1000年のポフツカワを見たことがあるが、地を這うようにうねる枝が四方八方にのび、異様とさえ言っていい生命力を感じさせてくれた。
ハワイやニューカレドニアにも親戚がいる!
ポフツカワの学名はMetrosideros excelsa(メトロシダラス・エクセルサ)という。メトロシダラスが苗字のようなもので、エクセルサは名前にあたる。
このメトロシダラスの仲間は実は60種類近くもあって、NZには12種類、そのほかはニューカレドニアやハワイなど太平洋諸国に分布している。しかし、太平洋諸国のものは、元をただせば元祖はニュージーランドのポフツカワだと言われていて、軽い種子が風にのって太平洋にまで飛んでいき、それぞれの国で進化したらしい。
こうやって考えてみると、ポフツカワの分布ひとつとっても、南太平洋に浮かぶニュージーランドとハワイやニュカレドニアとのつながりが見えてくる。面白いものだ。
マオリの伝説になっているポフツカワ
マオリの伝説のなかでも、ポフツカワはとても重要な役割を担っている。
マオリ族のいい伝えによれば、死者は魂となって北島最北端のケープ・レインガ(Cape Reinga)に向い、そこから彼らにとっての伝説の故郷ハワイキに向って旅立つ。
ケープ・レインガにたどり着いた魂たちがニュージーランドから先の別世界にいくとき、その入口として利用するのが、崖っぷちに生えている樹齢800年とも言われるポフツカワの木だ。その木をつたって、根の先からハワイキに向かって旅立っていくと言い伝えられている。
保護されていて、無断では切ってはいけない
ニュージーランド人にとっても、そしてかつてのマオリ族にとっても大切な花や木であったポフツカワ。現代では街中でも普通にみかけるため想像しにくいものの、じつは本来あったポフツカワの90%はすでに消失してしまっている。原因はもちろん人間活動だ。
そのため現在ポフツカワは完全に保護されていて、たとえ自分の敷地あってもやむを得ず切り倒す場合は政府の許可が必要となっている。
ハチミツは意外とおいしい
ニュージーランドの蜂蜜と言ったらマヌカ・ハニーがいちばんよく知られているが、僕が好きなのはこのポフツカワの花の蜜からできるポフツカワ・ハニーだ。マヌカハニーはかなりクセが強いので、普段パンにぬったりする分には、安くて食べやすいポフツカワハニーのほうが使い勝手がいい。舌触りも滑らかで濃厚な甘みが特徴だ。
アマゾンで調べたら日本でも買えるようなのでぜひ試してみてほしい。
もし夏にニュージーランドに行く機会があったら、ぜひポフツカワを探して、NZの夏を満喫してみよう。きっときれいな写真とともに、素晴らしい思い出になるはずだ。
- 参考HP
DOC(NZ環境省) – Pohutukawa
Wikipedia – Metrosideros excelsa
The Meaning of Trees – Pohutukawa
Last Updated on 2022年9月20日 by 外山みのる
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