「カウリ」という樹がニュージーランドにあるのをご存じだろうか?
カウリは世界でもニュージーランドのみ、しかも北島の上の方でしか見られない、たいへん珍しい木だ。その最大の特徴は長寿で巨大に育つことで、もっとも大きい樹は現地語で「タネ・マフタ」=森の神と呼ばれ、その樹齢は2500年に達すると言われてる。
さて、このページでは、ニュージーランドの誇る巨木「カウリ」の魅力を10の項目に分けて紹介したい。読み終えたら、きっと「直接みてみたい!」と思ってもらえるはずだ。
カウリの魅力1:タネマフタは屋久杉と姉妹木!

現存するカウリの中で最も大きい、タネ・マフタと呼ばれるカウリは、なんと我らが屋久島の「屋久杉」と“姉妹木協定”を結んでいる。屋久島と同じく大量伐採された歴史もあり、現地の人たちの信仰を集めている点など、多くの共通点があることから2009年に協定が実現した。
両方を実際に見た僕の経験としても、この2本の巨木はとても雰囲気が似ていると思う。深い森の中に忽然と現れる想像を絶する巨大な生き物。年老いてなお、何かを語りかけているような神秘的なたたずまい。この協定がもっと知られて、NZと日本の交流にもいい影響を与えてほしいと思う。
カウリの魅力2:世界でもここだけの固有種
カウリの属するアガディス(agathis)という科は、実をいうとニュージーランドだけでなく、お隣オーストラリアや東南アジアにも見られるが、その中でも最大になるのがニュージーランド版アガディス=カウリだ。
カウリはニュージーランドの、暖かくて降水量の多い地域にのみ生息域が限られていて、自然と北島の、さらに北半分だけに見られる。具体的には、コロマンデル半島、オークランド西のワイタケレ地域、そして最大のタネマフタのあるワイポウアとその周辺の森に分布する。世界的にみればカウリはかなりレアな植物と言っていい。
カウリの魅力3:生まれはジュラ紀!
カウリの歴史はとてつもなく古い。
カウリの祖先は、1億9960万年~1億4560万年・・なんていう途方もない太古の昔、恐竜が闊歩していたジュラ紀の時代にまでさかのぼる!世界でも最も古いタイプの植物で、カウリはまさに生きた化石なのだ。
カウリの魅力4:長寿で2500年!スロー成長
カウリは超がつくほどの長寿だ。
上述の通り、最大のタネ・マフタは樹齢2500年とも言われる。
紀元前から生きている(!!)と言い換えると、そのすごさがお分かりになるはず。
長寿ゆえに成長は途方もなくゆっくりだ。
カウリの年輪を見るととても密で、つまりこれは育ちがとても遅いことを意味している。オークランド大学に植樹された80年もののカウリがあるが、ちょうど日本でみかける杉の樹くらいの大きさだった。杉の80歳なら、しめ縄がつく大きさに育つはずで、杉と比べてみるとカウリの育ちの遅さがよくわかる。
カウリの魅力5:最大約51m、幹回り約16mの巨木

カウリはその大きさもまた途方がない。
高さは最大で50mを超える。これはビル15階建てに相当する高さだ。
カウリが際立っているのは、高さよりも、むしろ幹回りだろう。
幹回り最大として知られるカウリは「テ・マツア・ナヘレ(森の父)」と名付けられており、その幹の大きさはなんと16mにも達する。これは大人10人がかりでやっと囲えるサイズ!想像してみるとなんて大きさだろう。
カウリの魅力6:あっと驚く防御本能

カウリの姿を写真でみて、不思議に思ったことはないだろうか?それは、
「枝が全然ない!」
ということ。成長したカウリは、最初の枝が地上数十メートルというのが普通だ。
言い換えれば、途中まで枝がまったくなく、地面からまっすぐに巨大な幹が天に向かって伸びている。
実はこれ、カウリの生存競争に勝つための戦略だ。ニュージーランドの森には寄生植物や着生植物の類がたくさん生息していて、ゆっくり成長するカウリはそれらに対抗するための防衛手段が必要だった。そこで、彼らは不要になった枝は自ら落とせるように進化した。さらに、よーく幹を見ると皮はウロコのようになっていて、ペリペリとはがれるようになっている。枝と皮が剥がれ落ちやすいから、這い上がってくるタイプの植物は容易にはカウリに近づけない。こうして超・長寿が可能になったのだ。
カウリの魅力7:木からとれる宝石「カウリガム」

カウリはちょうど松ヤニのように、傷ついた幹から液体を出す。これが大きな塊になって地面に落ち、長い年月をかけて化石化すると、まるで宝石のような琥珀が出来上がる。これが初期入植者たちに「カウリガム」と呼ばれて重宝され、高値で取引されたらしい。中には、太古の昔の昆虫を取り込んだままのカウリガムもあったとか。
カウリガムは現代ではほとんど取れなくなり、もはや宝石そのものとして高値で売られている。
カウリの魅力8:マオリの伝説では「この世をつくった樹」
最大の樹「タネ・マフタ」は、先住民族マオリの伝説ではランギヌイ(空の父)とパパトゥアヌク(大地の母)の2人の神から生まれた子どもだったそうだ。父と母は固く愛し合って片時も離れず、大地と空はくっつき、世界は闇に覆われていた。そこでタネマフタは両肩を地面に埋めて足を空に着きだし、父と母を引き離した。すると強い光が差し込み、世界が始まったという。
タネマフタは、マオリの神話では、世界に光をもたらした存在だった。「森の神」という名前もそこから名付けられたらしい。
カウリの魅力9:かつては樹齢4000年&タネ・マフタの2倍もある樹も
現代こそ、最大の樹は「タネ・マフタ(森の神)」、幹回り最大は「テ・マツア・ナヘレ(森の父)」とされているが、記録上ではさらに大きなカウリもあったと言われている。
19世紀の話になるので正確なデータがなく参考記録ではあるが、当時の計測で幹回り24.3mのカウリがあったとされる。これは「タネマフタ」の2倍もの大きさだ。さらに、別の樹に至っては樹齢4000年と考えられたものもあったという。どちらも伐採や火災によって失われてしまったが、太古のニュージーランドは想像を超えるダイナミックな森だったに違いない。
カウリの魅力10:ワイポウアは完璧な「カウリ・フォレスト」

「森の神」「森の父」があるのは、オークランドから車で北に3時間ほどの場所にある「ワイポウア」という場所だ。周囲には町らしき町もなく、皮肉なことに僻地ゆえに巨大なカウリも伐採から逃れることができた。
言い換えると、ワイポウアの森は、かつてのニュージーランドの原始的な森をそのまま保存した唯一の森と言っていい。
カウリが優先する森は、世界のどこにもない異様なたたずまいをしている。ジャングルのような濃密な森ではなく、むしろ不思議なくらいがらんとした森だ。これは巨大なカウリが優先することでほかの種の大木が進出できず、森の奥まで点々とカウリが生えるだけの森ができるから。巨木が優先する極相林(成熟した森)は広く穏やかで、神秘的な静けさがある。パワースポットというか、森そのものが神秘的なパワーを漂わせているかのようだ。
いかがだっただろうか?別の記事で、ワイポウアの行きかたや僕の体験談も紹介していきたい。
追記:「ワイポウア・フォレスト」のトレッキングコース案内をUP。
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追記2:カウリの原生林が立ち入り禁止になる・・!?その意外な理由とは。
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追記3:ニュージーランドの巨木カウリのトップ10リスト!
- 参考HP
DOC – Waipoua Forest
100% Pure nz – タネ・マフタ - 天と地を隔てた者
the encyclopedia of NZ – Kauri
Last Updated on 2022年9月22日 by 外山みのる
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