日本とニュージーランドを唯一直行便で結ぶ航空会社『エア・ニュージーランド』。
白と黒だけを使ってシダのような模様を大胆にあしらったそのロゴは、たくさん機体が並ぶ空港にあっても、ニュージーランドの機体だとすぐに見分けがつく。
でも、なんで航空会社のロゴにシダが使われているんだろう?これがことのほか深い意味をもっていて、知ってみるとなるほどと思う背景がある。今日はニュージーランド航空の「シルバーファーン」と「コル」について書いてみよう。
ニュージーランド航空のロゴ「コル」とは?

ニュージーランド航空の機体には2つのデザインが施されている。
一つは白と黒のシダの葉だとなんとなくわかるけど、垂直尾翼に描かれた丸っこいロゴの意味はなんだろう?
これはニュージーランドで「コル Koru」と呼ばれる、シダの新芽をデザイン化したものだ。

「コル」を最初にデザインとして用いたのは、先住民族のマオリ族だ。
彼らにとって、シダというのは生きるために欠かせない大切な植物だった。数百あるシダの種類を正確に把握し、あるシダは根をすりつぶしてこれを主食としたし、大きな木性シダの新芽は大切な食として、葉や幹は建物の素材として、余すところなくシダを使ってきた。

それだけに、マオリ族にとって木性シダの芽吹きは一族の繁栄を保障してくれる大切なシンボルとなったことは想像に難くない。いつからか、その新芽=コルはマオリ族にとって「成長」「平和」「新たな力」のような意味合いをもって使われるようになった。
もう一つのロゴ、ニュージーランドのシルバーファーン

ニュージーランド好きにはおなじみのシルバーファーン。空港でニュージーランド航空の機体に堂々と描かれたシルバーファーンを見るだけで胸が高鳴る人もきっといるだろう(..って僕だけ?)。
とにかくニュージーランドではいたるところでこの「シルバーファーン」が象徴として使われている。たとえばラグビーチーム「オールブラックス」の胸のロゴもそうだし、

2016年にNZ中を騒がせたニュージーランドの新国旗案も、その多くはこのシルバーファーンがモチーフになっていた。

あるいは「コル」よりもよく見かけるのがシルバーファーンの葉のデザインだと言っていい(どちらも、同じシダではあるけれど)。
シルバーファーンにもマオリ族に関わる逸話がある。
シルバーファーンはその名前の通り裏側が真っ白で、月光にさらすと真夜中の森でもとてもよく目立った。これを利用し、夜間の移動や、特に戦闘の際、葉を裏返しにして地面において矢印のようにすることで、無言のうちに自分の行き先を味方に知らせることができたという。
そこから転じて、シルバーファーンには前進や躍動といった力強いポジティブな意味合いを持つようになっていったという。ニュージーランドを代表する組織や企業の多くはこのシルバーファーンを何らかの形でモチーフ化しているところを見ると、もはやシルバーファーンはニュージーランドの精神的な象徴とさえ言ってもいいかもしれない。
今度ニュージーランド航空の機体を見かけたり乗ったりするときは、そっとロゴに込められた願いに思いを馳せてみよう。きっと少しだけ、ニュージーランドの想いが伝わってくるはずだ。
Last Updated on 2022年9月22日 by 外山みのる
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